この記事でわかること
  • AI担当になった最初の1か月でやること
  • 週ごとに進める具体的な流れ
  • 一人で抱え込まないための考え方

「うちのAI担当、よろしく頼むよ」

社長からそう言われて自分の席に戻ったものの、何から手をつければよいのか分からず、画面の前で固まってしまう。社内に詳しい人もおらず、相談できる先輩もいない。

この記事は、そんな状況にいる方に向けて、AI担当になった最初の1か月の過ごし方を整理するものです。

AI担当に任命されたら、まず何をする?

最初の1か月は、4つの段階で進めるのが現実的です。

1週目は、自分でAIに触れてみる。
2週目は、社内の状況を把握する。
3週目は、社内ルールの土台を作る。
4週目は、少人数で試運転してみる。

この順番で進めると、何から手をつければよいか迷いにくくなります。

いきなり全社展開を目指す必要はありません。1か月後のゴールは、「数人で業務に使い始めている状態」で十分です。

AI活用は、半年から1年かけて少しずつ整えていくものです。最初の1か月で、仕組みづくりも、社員教育も、成果づくりも、すべて背負う必要はありません。

ここからは、週ごとに何をやればよいかを順番に見ていきます。

1週目:まず自分でAIに触れてみる

最初の1週間は、自分の手でAIを動かすことに集中します。社内展開のことは、いったん考えなくて大丈夫です。

個人でも使いやすい代表的なAIサービスには、ChatGPT、Claude、Geminiがあります。いずれも無料で試せる範囲があるため、まずは登録して触ってみるところから始めます。

使い始める前に、最低限の設定を確認しておくと安心です。ChatGPTとは?中小企業のための完全ガイドClaudeとは?中小企業のための完全ガイドGeminiで最初にやっておくべき設定と業務利用の始め方を参考にすると、最初に確認すべき点を整理できます。

試す題材は、自分の日常業務が向いています。たとえば、次のように依頼してみます。

「以下のメールを、お客様向けに丁寧な言い回しに直してください。意味は変えずに、です・ます調で整えてください。」

手元のメールを貼り付けて、返ってきた文章を読んでみてください。実際に使ってみると、「思ったより自然に書ける」「ここは自分で直した方がよさそうだ」といった発見があります。

AIに任せきりにするのではなく、最後の仕上げは自分で行う。この前提で使ってみてください。

このとき、何を聞いて、どのような回答が返ってきたかを簡単にメモしておきます。後で社内に共有するときの材料になります。

AIの回答には、事実と違う内容が含まれることもあります。そのまま使わず、必ず自分の目で確認する。この習慣も、1週目のうちにつけておきましょう。

2週目:周囲の状態を把握する

1週間自分で触れて感触がつかめたら、次は社内に目を向けます。

部署ごとに、「AIを使っている人がいるか」「使ってみたいと思っている人がいるか」を聞いて回ります。改まった会議を開く必要はありません。まずは雑談の中で聞くくらいで大丈夫です。

実際に聞いてみると、すでに個人アカウントでChatGPTなどを使っている社員が見つかることがあります。会社の許可を取らずに、業務で使っているケースもあります。

こうした状態は、シャドーAIと呼ばれます。社員が無許可で生成AIを使う「シャドーAI」とは?もあわせて読んでおくと、社内の状況を整理しやすくなります。

一方で、「使いたいけれど怖くて手を出せない」という人の声も大事です。何が不安なのか、何が分かれば使えそうなのかを聞いておくと、次の週のルール作りに活かせます。

経営者の認識と期待値も、この週のうちに確認しておきましょう。

  • どこまで任されているのか
  • 予算はどれくらいあるのか
  • いつまでに何を求められているのか

この3点を一度すり合わせておくと、後から方向性がずれにくくなります。

3週目:社内ルールの土台を作る

3週目は、ルールづくりに入ります。

最初から完璧な規程を作る必要はありません。まずはA4用紙1枚にまとめるくらいで十分です。

決めておきたいのは、大きく3つです。

  • AIに入力してはいけない情報
  • 使ってよいサービスとプラン
  • 困ったときの相談先

1つ目は、AIに入力してはいけない情報です。お客様の個人情報、未公表の経営情報、契約書の中身、取引先との価格情報などが代表例です。

2つ目は、使ってよいサービスとプランです。社員がそれぞれ別のAIサービスを使っていると、会社として管理しにくくなります。まずは、業務で使ってよいサービスをいくつかに絞っておきます。

3つ目は、困ったときの相談先です。最初は、AI担当本人で問題ありません。「迷ったらこの人に聞く」と決めておくだけでも、社員は動きやすくなります。

詳しい中身は、中小企業のためのAIセキュリティ完全ガイド社内のAI利用ルール、何を決めればいいですか?AIに入力してはいけない情報とは?を参考にしてください。

これらを読んだうえで、自社に必要な内容だけを選び、まずは小さく始めます。

ルールは、作って終わりではありません。実際に使いながら、少しずつ直していくものです。最初から完成品を目指すと動きにくくなるため、2週目で集めた社内の声に答える形で、必要最小限から始めましょう。

4週目:少人数で試運転する

最後の1週間は、自分以外の人にもAIを使ってもらいます。

協力者は1人か2人で十分です。2週目に話を聞いた中で、「使ってみたい」と言っていた人に声をかけます。

一緒に実際の業務でAIを使ってみて、操作で迷うところや、回答に納得がいかないところを横で見ておきます。

自分が触ったときには気づかなかった、操作の壁や戸惑いが見えてきます。

  • 「画面のどこを押せばいいか分からない」
  • 「回答が長すぎて読む気にならない」
  • 「どこまで直せばいいのか判断できない」

こうした反応は、次の改善材料になります。

うまくいったこと、困ったことを簡単に記録しておきましょう。これが、1か月後の経営者への報告や、次の段階に進むための材料になります。

1か月後:見えてきたら次のステップへ

1か月が終わったら、集まった情報を整理します。

自分で試したこと、社内で聞いた声、ルールのたたき台、少人数で試運転した結果。これらをA4数枚にまとめて、経営者に進捗を報告します。

報告の場では、「すぐに全社展開できる成果」を求められることがあるかもしれません。

そのときは焦らず、「まず数人で使い始めた段階です」「次の1か月で勉強会の準備を進めます」と、段階を分けて伝えます。

ここまでできていれば、最初の1か月としては十分に前に進んでいます。次の1か月で勉強会の準備や対象者の拡大に進めば、半年後には社内の見え方もかなり変わっているはずです。

AI担当としての3つの心構え

最後に、最初の1か月を進めるうえで持っておきたい考え方を3つ整理します。

1つ目は、完璧を目指さないことです。

最初は試行錯誤の連続で問題ありません。AI活用は、やってみないと分からないことが多い領域です。最初から正解を出そうとしすぎると、動き出せなくなります。

2つ目は、一人で抱え込まないことです。

AI担当という名前がついていても、一人で全部をやる役割ではありません。経営者の協力、社内の協力者、外部の情報源をうまく使いながら進めてください。

3つ目は、1か月で全社展開を目指さないことです。

AI活用は、半年から1年かけて少しずつ広げていけば十分です。早く広げることよりも、続けられるペースを守ることの方が大切です。

まとめ

AI担当になった最初の1か月は、次の4段階で進めると動きやすくなります。

1週目は、自分で触る。
2週目は、周囲を把握する。
3週目は、ルールの土台を作る。
4週目は、少人数で試運転する。

まずは、1週目の「自分でAIに触ってみる」から始めてください。実際に手を動かすと、分からないことだけでなく、社内で使えそうな場面も見えてきます。

Q&A

Q1. 他業務と兼任しているので、AI担当の作業に時間が取れません。どれくらいの時間を確保すればいいですか?

最初の1か月は、週に2〜3時間取れれば十分です。

1週目の試用は、短い空き時間でも進められます。2週目のヒアリングも、雑談の中で聞くくらいから始められます。3週目のルール作りだけは少しまとまった時間が必要なので、半日ほど確保できると安心です。

最初から専任のように動こうとすると続きません。兼任でできる範囲から、無理なく進めてください。

Q2. 1か月後に経営者から「成果は?」と聞かれたら、どう答えればいいでしょうか?

「数人で業務に使い始めた段階です」と、現状をそのまま伝えるのがよいでしょう。

1か月で全社展開まで進める必要はありません。社内のAI利用の実態、ルールのたたき台、試運転で見えた課題を簡単にまとめて見せると、きちんと進んでいることが伝わります。

あわせて、次の1か月で何をするかも伝えると、報告が前向きになります。

Q3. 自分より詳しい社員がすでにいる場合、AI担当としてどう関わればいいですか?

その方の知見を借りながら、AI担当は調整役に回るのが現実的です。

詳しい人は、自分の業務の中で個人的に使いこなしている場合があります。ただ、その知識が社内全体に広がっているとは限りません。

AI担当は、その人に協力してもらいながら、ルールづくりや勉強会の準備、社内共有の仕組みづくりを進める役割を担うとよいでしょう。「教わる」だけでなく、「一緒に社内へ広げる」スタンスで関わると進めやすくなります。