この記事でわかること
- プロジェクト機能が活きる業務の見極め方
- 1つの業務をプロジェクト化する具体例
- 指示とナレッジを育てる考え方
取引先への納期変更の案内文を、毎月のようにClaudeに下書きしてもらっている。
それ自体は便利ですが、毎回「当社は福島県で食品加工をしていて、取引先は卸売業者が中心で、文体は固すぎず……」と前提を書き直していると、入力欄がどんどん長くなっていきます。
似たような業務なのに、毎回ゼロから説明し直している。そんな実感が積み重なっていきます。
この手間は、Claudeの「プロジェクト機能」で減らせます。
プロジェクト機能は、繰り返し発生する業務のために、専用の「作業部屋」を作る機能です。業務ごとの前提や参考資料をあらかじめ入れておくことで、毎回同じ説明をしなくても、Claudeに文脈を踏まえて答えてもらいやすくなります。
大切なのは、プロジェクトを一度作って終わりにしないことです。使いながら、指示や資料を少しずつ育てていく。この感覚を持てるかどうかで、AIの業務活用は大きく変わります。
プロジェクト機能は「繰り返し業務の作業部屋」
通常のClaudeのチャットは、基本的にその場の会話として使います。
文章の下書き、要約、アイデア出しなどには便利ですが、毎回似た業務を頼む場合は、同じ前提を何度も説明する必要があります。
一方、プロジェクト機能では、目的別の作業部屋を作れます。プロジェクトごとに「指示」と「ナレッジ」を置いておけるため、その業務に必要な前提をClaudeに伝えた状態で作業を始められます。
| 項目 | 役割 | 入れる内容の例 |
|---|---|---|
| 指示 | Claudeに守ってほしいルールや前提を伝える | 自社の業種、文体、避けたい表現、回答の形式 |
| ナレッジ | Claudeに参考にしてほしい資料を置く | 会社概要、過去の文書、商品リスト、提案書の見本 |
そのプロジェクト内でチャットを始めると、あらかじめ入れた指示やナレッジを踏まえた回答が返ってきやすくなります。
プロジェクト機能を使う目安は、次の2つです。
- 同じような業務を何度もClaudeに頼んでいる
- 毎回、似た前提を説明し直している
どちらかに当てはまるなら、プロジェクト機能を使う価値があります。
なお、プロジェクト機能は無料プランでも利用できます。2026年5月時点では、無料プランで最大5つまで作成できるため、最初の1つから気軽に試せます。
取引先への案内文づくりを、1つの部屋にまとめる
冒頭の「取引先への案内文づくり」を例に、プロジェクトの作り方を見ていきます。
まず、Claudeで新しいプロジェクトを作ります。名前は、業務内容がひと目で分かるものにします。
例:
- 取引先案内文づくり
- 納期変更連絡
- 卸売業者向けメール作成
次に、指示の欄に自社の前提や文体のルールを書きます。
たとえば、次のような内容です。
福島県で食品加工業を営む会社です。社員は30名ほどです。取引先は卸売業者が中心です。案内文は丁寧めで、固すぎないトーンにしてください。専門用語は避け、最初に要点を1行で示してから、詳しい内容を続けてください。
続いて、ナレッジに参考資料を入れます。
| 入れる資料 | 目的 |
|---|---|
| 会社概要 | 自社の業種や事業内容を反映させる |
| 過去に送った案内文 | 文体や構成を近づける |
| 商品リスト | 商品名やカテゴリを確認しやすくする |
| よくある連絡文の見本 | 毎回の下書きの精度を上げる |
ここまで設定したら、そのプロジェクト内でチャットを始めます。
これまでなら、毎回「当社は福島県の食品加工会社で、社員は30名で……」と説明していたところを、次のように短く依頼できます。
来月20日が納期の件、1週間後ろにずれることになりました。取引先向けの案内文を下書きしてください。
Claudeは、あらかじめ入れた指示やナレッジを踏まえて、取引先向けの案内文を作りやすくなります。
ただし、出てきた下書きの最終確認は必ず人が行います。納期の日付、価格、取引先ごとの事情、最終的な言い回しは、AIが常に正しく判断できるわけではありません。
下書きはClaude、仕上げは人間。この前提は、プロジェクト機能を使う場合も変わりません。
自社のどの業務がプロジェクト向きか
プロジェクト化に向いている業務には、共通点があります。
- 似たような文書を何度も作っている
- 毎回、同じ前提や背景を説明している
- 参考にしてほしい過去資料がある
- 文体や構成をそろえたい
- 担当者によって品質がばらつきやすい
たとえば、次のような業務はプロジェクト化しやすい候補です。
| 業務 | プロジェクト化するメリット |
|---|---|
| 定例会議の議事録まとめ | いつもの形式で要点を整理しやすい |
| 商品説明文の作成 | 商品情報や過去文体を反映しやすい |
| 求人原稿の下書き | 会社の魅力や募集条件をそろえやすい |
| 社内向け通達文 | 社内の文体や伝え方を統一しやすい |
| お客様への返信文 | よくある対応方針を踏まえやすい |
| 提案書のたたき台 | 会社概要やサービス資料を参照しやすい |
最初からすべての業務をプロジェクト化する必要はありません。
まずは、自分が一番「毎回同じ説明をしているな」と感じる業務を1つ選んでください。最初の1つで感覚をつかむと、2つ目以降は作りやすくなります。
プロジェクトは「作って終わり」ではなく「育てるもの」
ここが、プロジェクト機能を使ううえで大切なポイントです。
プロジェクトは、一度作れば完璧になるものではありません。最初の指示には漏れがあります。ナレッジにも足りない資料があります。出てくる答えも、最初はどこかズレることがあります。
それは失敗ではなく、普通のことです。
実際に使ってみると、次のような気づきが出てきます。
- この言い回しが毎回少し違う
- この前提がClaudeに伝わっていない
- この資料を入れておいた方がよさそう
- この表現は使わないように指示した方がよい
- 古い資料を参照しているので差し替えたい
こうした気づきが出たら、そのたびに少しずつ直します。
| 気づいたこと | 対応 |
|---|---|
| 文体が固すぎる | 指示に「固すぎない表現にする」と追記する |
| 商品名の扱いがずれる | 最新の商品リストをナレッジに追加する |
| 古い情報を参照している | 古い資料を削除し、新しい資料に差し替える |
| 毎回同じ修正をしている | その修正内容を指示に追加する |
やることは地味ですが、難しくありません。
指示に1行足す。古い資料を差し替える。新しい見本を1つ追加する。こうした小さな手入れを続けることで、プロジェクトは少しずつ自社の業務に合っていきます。
これからのAI活用では、「どんな指示文を書くか」だけでなく、「指示とナレッジをどう設計し、どう手入れし続けるか」が大切になります。
最初から完璧なプロジェクトを作ろうとする必要はありません。育てる前提で、まず1つ作ってみることが現実的です。
最後に、ナレッジに入れる資料には注意が必要です。
機密性の高い情報や個人情報は、そのままアップロードしないようにしてください。社外秘の数字、顧客リスト、未公開の取引内容などを扱う場合は、社内ルールに沿って判断する必要があります。
まとめ
次の一歩は、自社で毎回同じ説明をしている業務を1つだけ思い浮かべて、その業務用のプロジェクトを作ってみることです。
完璧でなくて構いません。まず1つ作って使い始めると、指示やナレッジを育てる感覚がつかめます。その感覚が身につけば、2つ目以降のプロジェクトを立ち上げる速度は段違いに速くなります。
1つ目を、今日のうちに作ってみる。そこから始まります。
Q&A
Q1. プロジェクトの指示と、Claude全体に効く設定はどう使い分ければいいですか?
役割が違います。
Claude全体に効く設定には、すべての会話で守ってほしい基本ルールを書きます。
たとえば、次のような内容です。
- です・ます調で答える
- 専門用語を使いすぎない
- 回答は長くしすぎない
- 不明点は確認する
一方、プロジェクトの指示には、その業務に限った前提を書きます。
たとえば、「取引先向けの案内文を扱う」「文体は丁寧め」「過去の見本と同じ構成にする」などです。
| 書く場所 | 書く内容 |
|---|---|
| Claude全体に効く設定 | すべての会話で守ってほしい基本ルール |
| プロジェクトの指示 | 特定の業務だけで使う前提やルール |
土台になる内容は全体設定へ。業務ごとの細かい設定はプロジェクト指示へ。このように分けると整理しやすくなります。
Q2. プロジェクトはどのくらいの頻度で見直すといいですか?
決まった頻度はありません。「使っていて気になったときに直す」が基本です。
それでも目安が欲しい場合は、次の2つのタイミングを意識すると運用しやすくなります。
ひとつ目は、業務の節目です。新商品を出した、サービス内容が変わった、取引先が増えた、料金表を改定した。こうした節目に合わせてナレッジを差し替えると、古い情報を参照する事故を防げます。
ふたつ目は、1〜2ヶ月に1回の棚卸しです。生成AIの機能やモデルの更新が速く、自社の商品や料金、取引先の状況も日々動きます。日々の修正だけでは「もう使っていない指示」「気づかないうちに古くなっている資料」が溜まっていくので、月に1回程度プロジェクトの中身を眺める時間を取ると、軽い状態を保ちやすくなります。
見直しは大がかりな作業ではありません。指示を1行直す、古い資料を新しいものに差し替える。この程度の手入れを、思い出したときに続けるだけで十分です。