この記事でわかること
- AIに作業させ、人が確認する工程の分け方がわかる
- ファクトチェックとコピーチェックで確認する内容がわかる
- 記事ごとの質のブレを抑える、レギュレーションの作り方がわかる
オウンドメディアを運用するうえで、記事作成は避けて通れません。生成AIにテーマを伝えれば、短時間で下書きを作れます。見出しも本文も整っていて、ぱっと読むとそのまま公開できそうに見えることもあります。
しかし、読み返すと内容が浅かったり、数字や制度名が本当に正しいのか判断できなかったりします。一般的な説明に終始していて、自社ならではの視点が入っていないこともあります。
この問題は、AIの性能で起こるわけではありません。多くの場合、記事作成の頼み方に問題があります。記事作成では、AIに最初から最後までを一気に作らせるのではなく、工程を分けて進めることで、その問題を避けやすくなります。
AIに記事を一気に作らせると、問題の原因が見えにくくなる
「このテーマで1本書いてください」という依頼は、生成AIへの指示としては範囲が広すぎます。
記事作成には、読者の想定、情報収集、構成づくり、本文作成、事実確認、表現の調整などの工程があります。それらを一度に依頼すると、AIは複数の作業を同時に処理することになります。
その結果、読者の想定のずれ、材料不足、構成の無理、事実確認の不足、トンマナ(文章の調子や言葉づかいの統一感)のずれなど、どこに原因があるのかを切り分けにくくなります。下書き全体をなんとなく直すことになり、最初から書き直したほうが早い、という状態になりがちです。
そこで、記事作成はパイプラインとして考えます。パイプラインとは、記事を一度に完成させるのではなく、作業を工程に分け、前の工程の結果を次の工程へ渡していく進め方です。この全体像は生成AIを活用して自社でオウンドメディアを構築・運用する方法でも触れていますが、この記事では記事作成の工程そのものを詳しく見ていきます。本メディアの記事も、この記事を含めてすべて、この工程分割で作成しています。
工程を分ける意味は、人が途中で確認しやすくなることだけではありません。工程ごとにAIに求める役割が明確になります。リサーチでは材料を集めます。アウトラインでは、読者が理解しやすい順番に並べます。ドラフトでは、決めた構成に沿って本文を書きます。ファクトチェックでは、確認すべき数値や制度名を洗い出します。コピーチェックでは、表記ゆれや不自然な言い回しを確認します。このように目的を分けることで、AIに伝える指示も具体的になります。
前の工程で確認した内容を次の工程に渡せるため、AIが前提を推測しながら書く部分も減ります。出力がずれたときも、どの工程に戻るべきかを判断しやすくなります。
AIに作業させ、人が確認する工程に分ける
記事作成は、大きく六つの工程に分けて考えると整理しやすくなります。
- ブリーフ:記事の狙い、読者、伝える内容を決める
- リサーチ:記事に必要な材料を集める
- アウトライン:見出しと本文の流れを組み立てる
- ドラフト:構成に沿って下書きを作る
- ファクトチェック:数値、制度名、固有名詞などの事実を確認する
- コピーチェック:文章を公開できる状態に整える
本メディアでは実際には、この六つをさらに細かく分け、執筆後の校正・表現の点検・仕上げも独立した工程として運用しています。工程を分けるほど、AIに求める役割が明確になるためです。
ただし、必ずこの六つを厳密に分けなければいけないわけではありません。大切なのは、記事作成を一つの依頼で終わらせず、最初から工程を分けて進めることです。
ブリーフでは、AIに読者像や記事の切り口を出させ、人が自社の狙いに合うものを選びます。リサーチでは、AIに必要な材料を集めさせ、人が使う情報と使わない情報を分けます。アウトラインでは、AIに構成案を出させ、人が読者に伝わる順番になっているかを確認します。
ドラフトでは、AIに下書きを作らせ、人が内容の不足や違和感を確認します。ファクトチェックでは、AIに確認すべき箇所や根拠を探させ、人が裏付けを確認します。コピーチェックでは、AIに表記ゆれ、不自然な表現、重複、トンマナのずれを洗い出させ、人が採用する修正を決めます。
AIに作業をさせる範囲を広げても、最後の判断までAIに任せるわけではありません。AIの出力を材料として受け取り、人が確認して次の工程へ進めます。この流れを作ることで、記事制作を安定させやすくなります。
ファクトチェックでは何を確認すればいいのか
ファクトチェックは、記事の信頼性を守る工程です。AIは、事実と違う内容を自然な文章で書くことがあります。文章が読みやすいほど、間違いに気づきにくくなるため注意が必要です。
まずはAIに、本文中の確認すべき箇所を洗い出させます。数値、金額、年、企業名、サービス名、制度名、法律名、専門用語の定義などです。あわせて、それぞれの根拠として確認すべき公式サイト、行政資料、企業の発表などを探させます。
指示の形は、次のようになります。
この記事の本文から、事実確認が必要な箇所を洗い出してください。数値、年、企業名、サービス名、制度名、法律名、専門用語の定義を対象にします。それぞれ、確認先として見るべき公式サイトや行政資料の候補もあわせて挙げてください。
ただし、AIが出した確認結果をそのまま採用するのは避けます。最終的には、人が内容を確認し、必要に応じて一次情報にあたって裏付けを取ります。確認できない内容は断定せず、表現を弱めるか、記事から削除します。
コピーチェックで表記を整え、自社の情報を足す
コピーチェックでは、まず文章としての乱れを確認します。AIに、表記ゆれ、重複、不自然な言い回し、説明不足、文章のトンマナのずれを洗い出させます。見出しと本文が対応しているか、同じ意味の説明を繰り返していないかも確認します。
そのうえで、内容が一般論に寄りすぎていないかを見ます。AIの下書きだけでは、どこかで読んだような説明になりやすいからです。
現場で起きたこと、お客様からよく聞かれる質問、実際に支援したときの判断、社内で試してわかった注意点などは、AIだけでは作れません。このメディアも工程を分けて記事を作っていますが、読者に届く手応えが変わるのは、いつもこのコピーチェックで自社の具体例を足したときです。AIのコピーチェック結果をもとに、人が自社の具体例を足し、文章のトンマナをそろえることで、記事は公開できる状態に近づきます。
レギュレーションを決めて、記事ごとのブレを減らす
記事を継続して出すなら、文体や表記のルールを先に決めておきます。毎回ゼロからAIに依頼すると、記事ごとに言葉づかいや説明の深さが変わりやすくなります。
決めておくのは、文体、見出しの付け方、使わない表現、専門用語の説明方法、箇条書きの使い方、リンクの入れ方などです。Claudeのプロジェクト機能などに設定しておけば、最初の下書きから文章のトンマナをそろえやすくなります。たとえば、次のような指示をあらかじめ用意しておきます。
記事はですます調で書いてください。結論を最初に示してください。「ぜひ」「いかがでしたか」は使わないでください。専門用語は初めて出たときに説明してください。同じ意味の表現を繰り返さないでください。
本メディアでも、使わない表現を編集方針として定めています。たとえば「今すぐ」「簡単です」「誰でもわかる」といった表現は、読者を煽らないために使いません。
こうしたルールを用意しておくと、確認の手間を減らしやすくなります。
まとめ
AIで記事を作るときに必要なのは、丸投げすることではなく、最初から工程を分けて進めることです。工程に分ければ、下書きはAIが速く形にし、人は事実の確認と自社の視点を足すことに集中できます。AIは下書きを引き受けてくれる助けであり、仕上げの判断は人が担います。この役割分担が、続けられるメディアの土台になります。
工程の数は、必ず六つに固定する必要はありません。記事の狙いを決め、材料を集め、構成を作り、下書きを作り、事実を確認し、表現を整える、という流れに沿って進めるだけでも、どこで問題が起きたのかを判断しやすくなります。
サイトづくりの流れは生成AIでオウンドメディアを構築する流れにまとめています。サイトの準備ができているなら、次は記事づくりです。まず一回、一本の記事で、工程を分けて作る流れを試してみてください。
Q1. 六つの工程に必ず分ける必要がありますか?
六つは一つの型です。必ずこの数に固定する必要はありません。ただし、記事作成を一つの依頼で終わらせないことが大切です。記事の狙い、材料集め、構成、下書き、ファクトチェック、コピーチェックを分けて進めると、AIに依頼する内容と人が確認する内容がはっきりします。
Q2. ファクトチェックもAIに任せてよいですか?
AIに確認すべき箇所を洗い出させたり、根拠となる情報を探させたりすることはできます。ただし、AIの確認結果をそのまま公開判断に使うのは避けます。数値、制度名、企業名などは、人が一次情報にあたって確認してください。