この記事でわかること
- AIに頼んでも欲しいものが返ってこない、本当の理由がわかる
- 目的・ターゲット・トンマナを揃えるとはどういうことかがわかる
- 次にAIに頼む前に、書き出しておくべき3つの材料がわかる
「お客様向けの案内文を作って」とAIに頼んで、返ってきた文章を読みながら「なんとなく違う」と感じる。多くの方が一度は経験している場面だと思います。
この違和感の原因は、プロンプトと呼ばれる指示文の書き方だけにあるわけではありません。AIに頼む前に、自分の中で依頼の輪郭がぼやけていることが大きな原因です。
ここでいう輪郭とは、目的・ターゲット・トンマナの3つです。この3つを整理してから入力すると、AIから返ってくる文章は大きく変わります。
AIへの依頼がぼやけるのは、書き方だけの問題ではない
AIに頼んでもうまくいかないとき、多くの方は「プロンプトの書き方が悪かったのでは」と考えます。書店にもプロンプト本が並び、テクニックを学べば解決するように見えるかもしれません。
もちろん、指示の書き方は大切です。ただ、その前に確認しておきたいことがあります。
それは、自分が何を頼みたいのか、自分自身で整理できているかどうかという点です。
AIに上手に頼める人がやっている、6つのことでは、頼み方を6つの要素に分けて整理しました。今回はその中でも土台になる、「目的を明確にする」と「成果物を具体化する」の話です。
なお、依頼の整理以前に、AIの操作そのものに慣れる時間も必要です。その段階の話はAIが思ったように使えないのは、センスの問題ではないで扱いました。本記事では、操作には少し慣れた読者を想定して、依頼の中身を整理する方法に絞ります。
目的を明確にしようとすると、自然に「誰に向けるのか」「どんな雰囲気で伝えるのか」まで考える必要が出てきます。この2つは、頭の中では切り離して考えづらいものです。
目的を一文にすると、曖昧な部分が見えてくる
「営業資料を作る」は、目的ではありません。作業の名前です。
目的は、「何のために」「相手にどうなってほしいのか」まで含めて初めて見えてきます。
たとえば、「福島の取引先A社の担当者に、新サービスの導入を前向きに検討してもらうため」と書くと、何を目指す資料なのかが具体的になります。
試しに、AIに頼みたいことを一文で書いてみてください。途中で手が止まる場合は、どこかに言語化できていない部分があります。
「誰に向けたものか」が決まっていないのかもしれません。「相手にどうなってほしいか」が曖昧なのかもしれません。
目的の言語化は、依頼の輪郭を作る起点です。この一文が定まると、ターゲットやトンマナも考えやすくなります。
ターゲットは「みんな」ではなく1人を思い浮かべる
目的を一文にしようとすると、必ず「誰に届けるのか」という問いにぶつかります。
「お客様向け」「社内向け」というだけでは、AIに伝える情報としては少し粗くなります。「みんなに向けて」は、結局、誰にも届きにくい文章になります。
企画の現場では、ペルソナを描いたり、カスタマージャーニーを整理したりして、この「1人」を具体化する作業が行われます。
年齢や役職だけでなく、その人が今どんな状況にいるのか、何に困っているのか、過去に自社とどう関わってきたのか。そこまで考えることで、伝えるべき内容が絞られていきます。
AIに頼むときも、考え方は同じです。
たとえば「40代の総務担当者で、3年前に一度発注があり、最近は連絡が途絶えている方」と書くだけで、返ってくる文章の質感は変わります。
1人の相手を具体的に思い浮かべられるかどうか。これが、ターゲット設定の目安になります。
トンマナは「こういう感じ」を言葉にする作業
頭の中に「こういう感じの文章にしたい」というイメージがあっても、そのままではAIには伝わりません。AIに入力できるのは、言葉にしたものだけです。
トンマナを言語化するときに有効なのが、参考にしたいものを集める作業です。
他社の案内文、自社の過去のメール、気に入っているパンフレットなどを並べて、「自分は何をよいと感じているのか」を言葉にしていきます。
たとえば「丁寧だが堅すぎない」「温かみはあるが馴れ馴れしくない」「専門用語は使うが必要最小限にとどめる」「売り込み感を強く出さず、自然に相談につなげる」といった表現です。このように感覚を分解できれば、そのままAIへの依頼に使えます。
参考になるものが手元にない場合は、社内の過去のやり取りでも十分です。完璧な見本を探すより、手元にある文章から「何が近いのか」「何が違うのか」を言葉にしていきましょう。
3つが揃うと、依頼の輪郭が定まる
目的・ターゲット・トンマナ。この3つのどれかが欠けると、AIの返答は抽象的になりやすくなります。
実際にAIに入力するときは、次のような形になります。
岩手県内の取引先A社・総務部の田中さんに向けて、新しいサービスの案内メールを書いてください。田中さんは40代で、3年前に発注実績がありますが、最近1年間は接点がありません。目的は、まず一度オンラインで話す機会をもらうことです。トーンは、丁寧だが堅すぎず、過去のご縁を自然に思い出してもらえる柔らかさにしてください。長さは300字程度でお願いします。
ここまで書くと、AIにとっても「誰に」「何のために」「どんな雰囲気で」書けばよいかが伝わりやすくなります。
この3つを揃える作業は、AIのためだけではありません。自分の考えを整理するための作業でもあります。依頼文を書こうとして手が止まるときは、目的・ターゲット・トンマナのどれかが、まだ曖昧なままになっている可能性があります。
もちろん、返ってきた文章をそのまま使う必要はありません。AIが出すのは、あくまで素案です。最後は、自分の言葉に置き換え、必要な部分を直して仕上げる。この一手間は省けません。
まとめ
AIにうまく頼めないときは、プロンプトのテクニックを学ぶ前に、自分の中の輪郭を確認してみてください。
目的・ターゲット・トンマナ。この3つを書き出してから入力するだけで、返ってくる文章は変わります。
次にAIに何かを頼むときは、入力欄に打ち込む前に、紙やメモにこの3つを書き出してみてください。書き出している途中で、自分が本当は何を頼みたかったのかが見えてくるはずです。
Q&A
Q. この3つを全部書き出すのは時間がかかります。毎回必要ですか?
A. 軽い質問や調べごとなら、毎回書き出す必要はありません。書き出す価値があるのは、相手のいる文書を作るときや、判断のもとになる資料を頼むときです。返ってきた答えに違和感がある場合は、3つのどれかが欠けているサインかもしれません。最初に整理しておくことで、あとから何度も直す手間を減らしやすくなります。
Q. 参考にしたい既存のものが手元にないときは、どうすればいいですか?
A. 完璧な参考がなくても問題ありません。「こういう文章は違う」というNG例から考える方法もあります。「堅すぎる文章は避けたい」「営業色が強すぎるのは違う」と書くだけでも、AIへの指示として機能します。手元にあるものから始めて、少しずつ自分の感覚を言葉にしていけば大丈夫です。