この記事でわかること
- Webサイトを作る前に整理しておきたい企画・要件定義の考え方
- 機能を増やす前に確認すべきこと
- AIに相談できることと、社内で判断すべきことの違い
「自社のサイトを作り直そう」と話し始めたものの、最初の打ち合わせから話が広がりすぎて、なかなか前に進まないことがあります。
「どんなデザインがいいか」
「問い合わせフォームは必要か」
「採用ページも入れたほうがいいのではないか」
「ブログも作ったほうがよいのではないか」
このように話題は増えていくのに、何を優先するのかが決まらない。結果として、時間だけが過ぎてしまう。
こうした迷走の原因は、デザインや機能の前に決めるべきことが整理されていないことにあります。
Webサイト制作では、デザインに入る前に「何のために作るのか」「誰に届けるのか」「何を載せるのか」「公開後に誰が運用するのか」を明確にする時間が必要です。これが企画・要件定義の段階です。
この記事では、Webサイトを作る前に整理しておきたいことを、6つの観点で見ていきます。Webサイト制作の全体の流れはAIでWebサイトを作る完全ガイドで扱いました。ここでは、その最初のフェーズを深掘りします。
企画・要件定義では何を決めるのか
企画・要件定義と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
ただ、やることは複雑ではありません。Webサイトを作る前に、目的、ターゲット、伝え方、必要な機能、運用体制、予算や関係者を整理する作業です。
この段階を曖昧にしたままデザインに進むと、途中で「そもそも誰向けのサイトなのか」「このページは本当に必要なのか」という話に戻りやすくなります。
一度戻るだけならまだよいですが、デザインや文章を作ったあとに方針が変わると、手戻りは大きくなります。
最初に時間をかけて考えるのは、制作を遅らせるためではありません。後の工程を迷わせないためです。
明文化しておくと、困ったとき、迷ったとき、判断がブレたときに、そこに立ち返ることができます。逆に明文化しないまま進めると、戻る場所がないため、議論がそのつど一からやり直しになります。
もう一つ、6つの観点に共通する考え方があります。すべてを並列で扱わずに、何を優先するかを決めることです。目的が複数あればどれを最優先にするかを決める。ターゲットが複数いれば順番をつける。機能が多ければ目的に直結するものから残す。優先順位が明確じゃないと、議論がいつまでもまとまらず、サイトの方向性もぼやけていきます。
何のためのサイトかを一文で書く
最初に決めるのは、Webサイトを作る目的です。
「問い合わせを増やしたい」
「採用応募を増やしたい」
「取引先に安心してもらえる会社案内にしたい」
「商品の魅力を伝えて、購入につなげたい」
このように、一文で書けるかどうかを確認します。
「よいサイトを作りたい」「会社らしさを出したい」だけでは、目的としてはまだ曖昧です。何をもってよいサイトとするのか、会社らしさを誰にどう伝えたいのかが見えないからです。
目的が曖昧なままだと、後の判断がぶれます。ページを増やすべきか、写真を多く使うべきか、料金表を載せるべきか。迷ったときに戻る軸がありません。
目的が複数ある場合は、すべてを同じ重さで追わず、最優先を決めておきます。採用も問い合わせも信頼性向上も大切ですが、優先順位が明確じゃないと、後の章で出てくる機能や運用の判断がぶれます。
AIは、この目的を整理する壁打ち相手として使えます。
自社の事業内容、今困っていること、サイトを作り直したい理由を入力して、「Webサイトを作る目的の候補を出してください」と相談すれば、いくつかの切り口が出てきます。
ただし、最終的にどの目的を選ぶかは社内で決める必要があります。AIが出した言葉をそのまま使うのではなく、自社の状況に合う一文に直すことが大切です。
誰に届けるサイトかを具体的にする
目的が決まったら、次に考えるのは「誰に届けるのか」です。
年齢や役職だけでなく、自社との接点、困っていること、サイトを見る場面まで書き出します。
たとえば、「30代後半の総務担当者」だけではまだ粗い設定です。
「社内の業務効率化を任されているが、何から手をつければよいか迷っている総務担当者」まで書くと、必要な情報が見えやすくなります。
ターゲットが複数いる場合は、優先順位をつけます。
採用希望者、既存顧客、新規取引先、地域の人、金融機関など、企業サイトには複数のターゲットが訪れます。ただ、全員に同じ強さで届けようとすると、結局どのターゲットにも刺さりにくくなります。
誰を最優先にするのか。次に誰を想定するのか。この順番を決めておくと、ページ構成や文章の書き方が決めやすくなります。
あわせて、ターゲットがどのように自社を知り、サイトで何を確認し、次にどんな行動を取るのかも整理します。
たとえば、福島で食品の小売をしている会社が、近隣の飲食店に卸先を広げたい場合を考えます。
飲食店の仕入れ担当者は、紹介で会社名を知るのか、検索で見つけるのか。サイトでは、商品一覧、取引条件、納品エリア、実績、問い合わせ方法のどれを確認したいのか。
この流れを先に考えておくと、必要なページと不要なページが見えやすくなります。
AIには、ターゲット像や行動の流れの叩き台を作ってもらえます。ただし、出てくる内容は一般的なものです。自社の商圏、顧客との関係、営業の流れに合わせて直す必要があります。
自社の何を伝えるのかを決める
次に整理したいのは、自社の伝え方です。
ここでいう伝え方とは、「何を強みとして伝えるか」「どんな会社として見られたいか」ということです。
他社のサイトをいくつか見て、似ている点、違う点、よいと感じた点、違和感があった点を書き出してみると、自社の特徴が見えやすくなります。
注意したいのは、強みの言葉が浅くなりやすいことです。
「創業30年」だけでは、読み手にはあまり伝わりません。創業30年の間に何を積み重ねてきたのか、どんな顧客に選ばれてきたのか、どんな技術や対応力があるのかまで掘り下げる必要があります。
たとえば、山形で部品加工をしている会社なら、「精密加工が得意」だけでは他社との差が出にくいでしょう。
「精密加工に加えて、小ロットの試作対応に強い」
「短納期の案件を多く引き受けてきた」
「図面が固まりきっていない段階から相談に乗れる」
このように、現場で実際にやってきたことに踏み込むと、読み手に伝わる強みになります。
ここはAIに丸投げしにくい部分です。AIはきれいな言葉を出すことはできますが、自社の現場で積み重ねてきた経験までは知りません。社内の人が、営業、製造、サポート、経営の記憶や記録から拾い上げる必要があります。
どんな機能を載せるのかを絞る
企画・要件定義で特に迷いやすいのが、機能の選び方です。
お知らせ、事例紹介、問い合わせフォーム、資料ダウンロード、採用情報、ブログ、Q&A、料金表、会員ページ、検索機能など、候補はたくさんあります。
打ち合わせでは、「これもあったほうがいい」「念のため入れておこう」という話になりがちです。機能を増やす議論は盛り上がりますが、増やした後の運用や、ターゲットが本当に使うかどうかは後回しになりやすいところです。
機能を増やすと、まず運用の負担が増えます。
お知らせを設ければ、誰かが更新しなければなりません。ブログを作れば、記事を書き続ける必要があります。問い合わせフォームを置けば、返信する担当者と確認の流れが必要です。
また、機能が多すぎると、ターゲットが迷いやすくなります。メニューが複雑になり、どこを見ればよいか分からなくなるからです。
判断の軸になるのは、「あったら便利」ではなく、「目的のために必要か」で優先順位をつけることです。
採用強化が目的なら、料金表よりも社員インタビューや募集要項が優先されます。問い合わせを増やすことが目的なら、会社の沿革を細かく載せるより、サービス内容や導入事例を分かりやすく見せるほうが重要です。
機能を一つ足すなら、それを誰が運用するのか、ターゲットはどの場面で使うのか、目的にどうつながるのかをセットで考えます。
公開時に完璧を目指しすぎない姿勢も役に立ちます。Webサイトは公開後にも改善できます。最初は目的に直結する機能に絞り、残りは次の段階で検討するほうが、運用は続きやすくなります。
公開後に誰がどう運用するのかを決める
Webサイトは、作って終わりではありません。公開してからの運用が始まります。
更新は誰が担当するのか。どのくらいの頻度で更新するのか。社内で対応するのか、外部に依頼するのか。こうしたことを制作前に決めておく必要があります。
担当者が専任なのか、他の仕事と兼任なのかによっても、できることは変わります。
月に何本の記事を出すのか。お知らせはどのタイミングで更新するのか。採用情報は誰が確認するのか。問い合わせが来たら誰が返信するのか。
ここが曖昧なまま公開すると、サイトはすぐに止まります。
特に、お知らせやブログは注意が必要です。設置したものの、半年以上更新されていないと、かえって古い印象を与えることがあります。
機能の数は、運用に使える時間と合わせて決めるべきです。見栄えのために機能を増やすより、確実に続けられる範囲に絞るほうが、長い目で見て信頼につながります。
予算・スケジュール・関係者を整理する
最後に、予算、スケジュール、関係者を整理します。
いつまでに公開したいのか。どれくらいの予算を見込むのか。社内で誰が承認するのか。外部パートナーにはどこまで依頼するのか。
このあたりが曖昧なままだと、制作が進んでから止まりやすくなります。
特に注意したいのが、承認の流れです。
担当者同士で話がまとまっていても、デザインができた段階で経営層から大きな方針変更が入ることがあります。そうなると、構成や文章まで戻ることになり、時間も費用も膨らみます。
誰が、どの段階で、何を確認するのか。最初に決めておくと、後の混乱を防げます。
スケジュールも、希望だけで決めないほうがよいでしょう。
「3か月で公開したい」と思っていても、写真撮影、原稿確認、社内承認、商品情報の整理などに時間がかかることがあります。特に、社内の意見をまとめる担当者が他の仕事と兼任している場合は、確認に時間がかかる前提で考える必要があります。
無理なスケジュールは、後半の品質を下げます。公開日から逆算しつつ、社内で動ける時間も見て計画する必要があります。
AIに相談できることと、社内で判断すべきこと
企画・要件定義では、AIを使える場面が多くあります。
目的の候補を出す。ターゲット像の叩き台を作る。ターゲットの行動の流れを整理する。他社サイトの特徴を比較する。必要なページ案を出す。
こうした作業では、AIはよい壁打ち相手になります。白紙の状態から考えるより、AIが出した案を見ながら直すほうが進めやすいこともあります。
一方で、AIに任せられないこともあります。
自社が本当に優先すべき目的を決めること。自社の強みを現場の経験から掘り起こすこと。どの機能を残し、どの機能を削るかを判断すること。公開後に運用できる体制かどうかを見極めること。関係者の合意を取ること。
これらは、社内の事情や現場感を踏まえなければ決められません。
AIは考えるきっかけを作ることはできます。しかし、最後に選ぶのは社内の人です。
企画・要件定義は、AIで効率化できる部分と、人が時間をかけて判断すべき部分が混ざる工程です。そこを分けて考えると、AIを使ったWebサイト制作は進めやすくなります。
まとめ
Webサイト制作では、デザインや機能を考える前に、企画・要件定義を整理する必要があります。
目的、ターゲット、自社の伝え方、機能、運用、予算と関係者。この6つを先に明文化しておくと、後の工程で迷いにくくなります。
どの観点でも、すべてを並列で扱わずに優先順位をつけることが、判断を前に進めるコツになります。
逆に、ここを曖昧にしたまま進めると、デザインや文章を作った後で、何度も前の工程に戻ることになります。
AIは、目的やターゲットの整理、ページ案の作成、他社サイトの比較などで役立ちます。ただし、自社として何を優先するか、何を削るか、誰が運用するかは、社内で決めるしかありません。
Webサイトづくりを始める前に、まずは6つの観点を書き出してみてください。その整理があるだけで、AIに相談する内容も、外部パートナーに依頼する内容も、ずっと明確になります。
Q&A
Q1. 目的が複数あり、一つに絞り切れないときはどうすればよいですか。
A. まずは、「もし一つしか達成できないとしたら何を選ぶか」と考えてみてください。採用も問い合わせも信頼性向上も大切ですが、優先順位が明確じゃないと判断ができません。最優先の目的を一つ決め、残りは優先度順に並べておきます。そうしておくと、ページ構成や機能で迷ったときに戻る軸になります。
Q2. すでにAIでWebサイトを作り始めています。今から企画に戻ったほうがよいですか。
A. ゼロからやり直す必要はありません。一度手を止めて、目的、ターゲット、自社の伝え方を書き出してみてください。そのうえで、今作っているサイトがその内容に合っているかを確認します。ずれている部分があれば直し、合っている部分はそのまま活かせば大丈夫です。途中で整理し直すだけでも、完成度は上げやすくなります。