この記事でわかること
- 一つのアプリが動くために必要な要素がわかる
- 個人情報を扱うときに気をつけたいことがわかる
- 自分たちで作るか相談するかの判断軸が持てる
「何を扱うか」「不具合の影響範囲」「いつまで使うか」の3問に答えると、AIで作ったアプリを本番で使う前に確認すべき要素が見えてきます。
最近、AIに指示を出すだけで、業務で使えそうなツールの画面が短時間で作れるようになりました。いわゆるバイブコーディングと呼ばれる流れの広がりもあり、これなら自分たちでも作れそうだ、と感じる経営者や担当者の方も増えています。
ただ、画面が動いて見えることと、業務で安全に使えることは、少しだけ別の話です。この記事では、一つのアプリが動くために必要な要素を、やさしく整理していきます。
アプリは画面だけでできているわけではありません
AIで作れるようになったのは、主にアプリの「画面」と、画面の上での簡単な動きです。画面のことは、専門用語で「UI(ユーザーインターフェース)」と呼ばれています。
UIは、利用者が直接見て触る部分です。アプリのなかで一番目立つので、ここが動き始めると「アプリが完成した」気持ちになりやすい場所でもあります。
ただ、画面の裏側には、利用者には見えないけれど欠かせない仕組みが、いくつも動いています。画面だけが整っていても、その裏側が抜けていると、業務で使うのは難しくなります。
アプリを構成する要素を、いちど分解してみます
UIの裏側にはどんな要素があるのか、ひとつずつ見ていきます。
UI(画面)
利用者が見て、触る部分です。ボタン、入力欄、表示される情報など、アプリの顔にあたります。AIが得意としているのは、主にここです。
データベース
入力された情報やデータを保管しておく場所です。画面に「保存」ボタンがあっても、データベースの設計が抜けていると、情報がどこにも残らなかったり、あとから取り出せなくなったりすることがあります。
認証(ログインの仕組み)
誰がアプリを使っているのかを確認する仕組みです。これがないと、URLを知っている人なら誰でも、すべての情報を見られる状態になってしまうことがあります。
管理画面
利用者が使う画面とは別に、管理者だけが操作する画面です。アプリの状態を確認したり、登録された情報を整えたり、利用者の権限を切り替えたりするのに使います。
インフラ(サーバーなど)
アプリが動く土台になる場所です。Webサービスとして使うアプリは、インターネット上のどこかのコンピューターで動いています。このコンピューターを誰が管理し、料金を払い、止まらないように見ているか、というのもアプリの一部です。
これら5つに加えて、要素全体を横断する視点として、運用(動き始めた後の状態確認やバックアップなど、動かし続けるための活動)と、セキュリティ(外部や内部のリスクから守るための仕組み)があります。
すべてのアプリに、これら全部の要素が必要、というわけではありません。規模や用途によって、必要な要素は変わってきます。大事なのは「自分のアプリには、このうちのどれが必要なのか」を考える視点を持つことです。
個人情報や社内データを扱うときは、もう少し丁寧に
個人情報や、社内の業務データを扱うアプリの場合、先ほど挙げた要素のなかでも、認証とセキュリティは特に重要になります。
画面はきれいに動いているように見えても、認証の仕組みが甘いと、URLを知っている人なら誰でもアクセスできる状態になっていることがあります。利用者からは何も問題なく動いているように見えるため、気づきにくいのが厄介な点です。
個人情報が漏れた場合は、個人情報保護法に基づいて事業者に責任が問われます。この法律は、事業の規模に関わらず、個人情報を扱うすべての事業者に適用されます。顧客情報を扱う以上、会社の大きさによって責任の重さが変わるわけではありません。
「動くアプリができた」と「安全に使えるアプリができた」は、別の段階として考えておくと安心です。セキュリティの全体像については、中小企業のためのAIセキュリティ完全ガイドで別途扱っています。
自分たちで作るか、相談するかを決めるための3つの問い
自分たちで作っていい範囲を見極めるために、最初に決めておきたい問いが3つあります。
一つ目は、このアプリは誰のどんな情報を扱うかです。個人情報か、社内データか、公開情報か。扱う情報の性質によって、必要な備えが変わってきます。
二つ目は、不具合が起きたときに、どの程度の影響が出るかです。自分だけが困るのか、社内の業務が止まるのか、顧客に迷惑がかかるのか。影響が広いほど、慎重さが必要になります。
三つ目は、このアプリをいつまで使う予定かです。一度きりの試しなのか、長期間使い続けるのか。長く使うほど、運用や保守の話が出てきます。
この3つの答えがそろうと、自分たちで作っていい範囲が見えてきます。一度きりで、自分だけが使い、公開情報しか扱わないツールなら、自分たちで作って試す価値があります。長期間、複数人で使い、個人情報を扱うアプリなら、詳しい人と相談しながら進めたほうが安心です。
まとめ
AIで画面が動いたからといって、業務で使えるアプリができたとは限りません。一つのアプリには、画面の裏に、いくつもの要素があります。
最初の一歩として、「このアプリは何を扱うか」を一行だけ書き出してみてください。それだけでも、必要な要素のうち、どれを丁寧に考えるべきかが見えてきます。まず1回、書き出してみるところから始めてみてください。
Q&A
Q. AIで作ったアプリは、無料で使い続けられるのですか?
AIで画面を作る部分は、無料や低価格のサービスで済むことが多くなりました。ただ、業務で使い続ける場合は、アプリを動かすサーバーの料金、AIに処理を頼むたびにかかる利用料、データを保管する場所の費用などが、毎月かかってくることがあります。最初に「動かし続けるといくらかかるのか」を試算しておくと、後から困りにくくなります。
Q. 自分一人だけが使う社内ツールでも、すべての要素が必要ですか?
扱う情報が公開情報や、軽い集計データだけであれば、すべての要素を備える必要はありません。ただ、顧客情報や個人情報を含む場合は、一人で使うツールであっても、認証とセキュリティの考え方は外せなくなります。「自分しか使わないから大丈夫」と判断する前に、扱う情報の中身を確認しておくと安心です。
Q. 社内に詳しい人がいない場合、最初の相談先はどこですか?
地域の商工会議所や、ITコーディネーターの相談窓口、IT導入補助金の制度を活用するための支援機関などがあります。「このアプリは何を扱うか」「不具合の影響範囲」「いつまで使うか」の3つをいったん整理してから相談すると、話がスムーズに進みます。