生成AIというと、「自分の仕事を効率化するために使うもの」というイメージが強いかもしれません。文章を作る、資料をまとめる、調べものをするといった使い方は、すでに多くの仕事で広がっています。
一方で、生成AIは自分の作業時間を減らすためだけでなく、一緒に仕事をする相手へのフォローにも使えます。
たとえば、クライアントにツールの操作方法を説明したあと、マニュアルまで用意して渡す。社内で新しく業務を担当するメンバーに、口頭で説明した内容をあとから確認できる資料として残す。本当はそこまで用意したほうがよいと分かっていても、日々の仕事の中ではなかなか時間を取れないものです。
この記事では、打ち合わせの録画からマニュアルを作る方法を例に、生成AIを「相手の負担を減らすために使う」という活用方法を紹介します。
生成AIの活用は「自分の効率化」だけではない
生成AIの活用というと、文章作成が速くなる、資料を作りやすくなる、調べものの時間を減らせる、といった使い方がよく紹介されます。
もちろん、こうした使い方は便利です。私たち自身も、日々の仕事のさまざまな場面で生成AIを活用しています。
ただ、これらは基本的に「自分の仕事を効率化する」という使い方です。
仕事では、自分が早く作業を終えることだけが大切なわけではありません。クライアントや取引先、一緒に仕事をする社内のメンバーが、必要な情報を受け取り、自分で仕事を進められる状態をつくることも大切です。
生成AIは、こうした相手へのフォローにも使えます。
たとえば、これまで口頭で済ませていた説明を資料として残したり、相手があとから確認できるマニュアルを用意したりすることです。
自分の作業を10分短縮するためだけではなく、その10分を使って相手が仕事をしやすい状態をつくる。生成AIには、そんな使い方もあります。
本当はもう少しフォローしたいのに、時間がない
クライアントと仕事をしていると、「説明するだけではなく、あとから確認できる資料も渡せれば」と思うことがあります。
たとえば、新しいツールの操作方法を打ち合わせで説明したとします。
画面共有をしながら、「ここをクリックしてください」「この項目にはこの情報を入力します」「この場合はこの設定を変更します」と一通り説明すれば、その場では理解してもらえます。
ただ、実際に相手が数日後に自分で操作しようとすると、「ここはどうするんだっけ?」ということが出てきます。
社内でも同じです。新しくその業務を担当する人に一度説明しただけでは、すべてを覚えてもらうのは難しいでしょう。分からなくなるたびに説明した人へ確認することになります。
そんなとき、説明した内容をまとめたマニュアルがあれば、まずは自分で確認できます。
とはいえ、日々の仕事を進めながら、別途マニュアルを作る時間を確保するのは簡単ではありません。
説明した内容をもう一度思い出し、手順を整理し、文章にして、必要に応じて画像を入れ、読みやすい形に整える。内容によっては、かなりの時間がかかります。
納品や進行中の業務を優先すると、どうしても後回しになりがちです。
「マニュアルもあったほうがいい」と分かっていながら、そこまで手が回らない。こうした場面で、生成AIを使えるようになってきました。
打ち合わせの録画からマニュアルを作る
私たちは、クライアントとの定例ミーティングを録画することがあります。
その中では、単に進捗を確認するだけではありません。画面共有をしながらツールの操作方法を説明したり、資料の作り方を実際に見せたり、クライアントから出た質問にその場で答えたりすることもあります。
実は、マニュアルに必要な情報の多くは、こうした打ち合わせの中にすでにあります。
そこで、録画した打ち合わせを文字起こしし、その内容を生成AIに読み込ませます。
さらに、あらかじめ用意しておいたマニュアルのフォーマットに沿って、「今回説明した操作手順を整理してください」「質問と回答も必要な箇所に加えてください」と指示すると、マニュアルのたたき台を作ることができます。
ゼロから「何を説明したか」を思い出して書き起こす必要はありません。実際に説明した内容をもとに、生成AIに整理してもらえるからです。
もちろん、生成AIが作ったものをそのまま相手に渡すわけではありません。
説明した内容と合っているか、手順に間違いがないか、文字起こしの誤りが影響していないかなどを人が確認し、必要な修正を加えます。
それでも、最初からすべてを書く場合と比べれば、マニュアル作成にかかる負担はかなり減らせます。
これなら、これまで「作ったほうがいいけれど、そこまで時間をかけられない」と後回しになっていたマニュアルも、打ち合わせ後の作業として組み込みやすくなります。
マニュアルがあると、その後のやり取りも変わる
こうして作ったマニュアルは、当然ながら受け取る側にとって便利です。
打ち合わせで説明を聞いたあと、実際に作業するときに分からないことがあれば、まずマニュアルを確認できます。
「前回説明してもらった、この部分が分からない」と、その都度問い合わせる必要も少なくなります。
社内でも、新しく業務を担当するメンバーが、まずマニュアルを見ながら自分で作業を進められるようになります。
もちろん、マニュアルだけですべての質問がなくなるわけではありませんし、分からないことを聞いてもらうことも必要です。
ただ、基本的な操作や以前説明した内容を資料として残しておけば、毎回同じ説明を繰り返す必要は減ります。
その分、個別の相談や判断が必要なことに時間を使えるようになります。
また、こうした資料を用意することは、単に問い合わせを減らすためだけのものでもありません。
クライアントの立場からすれば、打ち合わせで説明を受けて終わるのと、あとから自分で確認できる資料まで用意されているのとでは、仕事の進めやすさが違います。
「ここまで用意してくれるのか」と感じてもらえることが、相手との信頼関係につながることもあります。
生成AIで生まれた時間を、相手のためにも使う
生成AIを使えば、文章を書く時間を短くしたり、資料作成の手間を減らしたりできます。
ただ、生成AIの使い道は、自分の仕事を速く終わらせることだけではありません。
これまで時間の問題で十分にできなかったフォローにも、生成AIを活用できます。
今回紹介したマニュアル作成も、その一例です。
打ち合わせの中ですでに説明している内容を文字起こしし、生成AIに整理してもらえば、ゼロからマニュアルを作る必要はありません。人はその内容を確認し、必要な修正を加えることに時間を使えます。
自分の作業を効率化して終わりではなく、その時間や生成AIの力を、クライアントや一緒に働く人が仕事を進めやすくするためにも使う。
生成AIが普及していくほど、こうした使い方も大切になってくるのではないでしょうか。