この記事でわかること

  • NotebookLMの答えの質が、入れる情報ソースで決まる理由がわかる
  • 形がある情報と、ベテランの頭の中にある情報、それぞれの集め方がわかる
  • 蓄積を一回きりで終わらせず、続けていく仕組みがわかる

NotebookLMで社内のナレッジを検索できるようにしたい。そう考えて始めようとすると、最初の壁にぶつかります。入れるべき資料が社内のあちこちに散らばっている。しかも、一番知りたい「ベテランの判断」は、そもそも文書になっていない。

社内ナレッジづくりの成否は、ツールの使い方よりも、何をどう蓄積するかで決まります。この記事では、情報ソースの集め方と、蓄積を続ける仕組みを解説します。

なぜ「何を入れるか」で答えの質が決まるのか

NotebookLM(Googleが提供するAIノートツール)は、読み込ませた資料の範囲で答える仕組みになっています。インターネット上の一般論ではなく、自社の資料に基づいて答えてくれることが強みです。NotebookLMそのものの仕組みはNotebookLMとは|社内の資料を読み込ませて使うAIノートで解説しています。

裏を返せば、入れた資料が古ければ古い答えが、薄ければ薄い答えが返ってきます。実際の運用と違う手順書を入れれば、間違った答えを自信ありげに返すこともあります。AIの賢さよりも先に、情報ソースの質を整えることが、社内ナレッジづくりの出発点になります。

社内の情報ソースは二種類ある

集めるべき情報は、大きく二種類に分かれます。すでに文書になっている「形がある情報」と、社員の頭の中にしかない「形がない情報」です。

種類 集め方
形がある情報 マニュアル、過去の提案書、議事録、日報、お客様とのメール 棚卸しして選別する
形がない情報 ベテランの判断基準、トラブル対応の勘どころ、お客様ごとの注意点 言語化して文書にする

形がある情報は集めれば済みそうに見えますが、選別という作業が要ります。形がない情報は、言語化という一手間を挟まないと、そもそも蓄積の対象になりません。それぞれ進め方を見ていきます。

形がある情報は、棚卸しと選別から

まず、社内にどんな資料があるかを棚卸しします。共有フォルダや個人のパソコン、紙のファイルまで探すと、意外な場所から出てくるものです。

集めた資料は、全部入れればよいわけではありません。選別の基準は三つあります。今の実務と合っているか。判断の理由まで書かれているか。古い情報や誤った情報が混ざっていないか。どの資料が向いているかはNotebookLMに入れる資料の選び方で詳しく整理しています。

特に注意したいのは、古いマニュアルです。現状と違う資料を入れると、AIはそれを根拠に答えてしまいます。迷ったら「これを新人が読んだら困らないか」を基準にしてください。

形がない情報は、どう言語化するか

ベテランの強みの多くは、暗黙知です。暗黙知とは、経験や勘に近い、言葉にして伝えるのが難しい知識のことです。「なぜそう判断したのですか」と聞いても、「経験で分かる」と返ってきがちで、本人にとって当たり前の判断ほど言語化しにくいものです。

言語化の方法は二つあります。

一つ目は、インタビューです。録音して文字起こしし、AIに整理させれば、本人が文章を書く必要はありません。聞くときは「仕事のコツを教えてください」と抽象的に聞かず、「最近、判断に迷った案件はありますか」「新人がよく間違える作業はどこですか」と具体的な場面に絞ります。質問づくりもAIに手伝ってもらえます。

ベテラン社員に業務の知見をインタビューします。具体的な事例や判断の理由を引き出すための質問を10個考えてください。相手は製造現場で30年働いてきた社員です。

二つ目は、記録の分析です。インタビューで拾えるのは、本人が言葉にできることだけです。そこで、会議の録音や、本人が過去に作った見積書・報告書・メールをAIに読み込ませ、「どんな場面で、何を基準に判断しているか」を分析させます。すると、本人も意識していない判断の型が見えてくることがあります。インタビューで本人から聞き出し、記録の分析で本人も気づいていない型を見つける。両方を組み合わせると、知見をより深く言語化できます。

やってみると、文字起こしには誤変換が残り、AIの整理にも実態とずれる部分が出ます。最後はベテラン本人に内容を確認してもらってください。この一手間が、安心して使える資産にするための条件です。

蓄積はどう続ければいいか

一度集めて終わり、では、ナレッジはすぐに古くなります。続ける仕組みとして、決めておきたいことが二つあります。

一つは担当者です。資料を追加し、古くなった情報を入れ替える役割を、一人決めておきます。もう一つは更新のきっかけです。「新しいトラブルに対応したら記録を追加する」「四半期に一度、内容を見直す」のように、タイミングをあらかじめ決めておくと続きます。

この取り組みは、現場任せにすると後回しになりがちです。経営者や管理職が「会社の資産づくり」として位置づけ、担当者と時間を確保することが、続けるための土台になります。社内マニュアルをAIで使える形にする具体的な手順は社内マニュアルをAIに読ませる|NotebookLMで社内FAQを作るも参考になります。

まとめ

社内ナレッジづくりは、ツール選びよりも、何をどう蓄積するかで決まります。形がある情報は棚卸しと選別で集め、形がない情報はインタビューと記録の分析で言語化します。そのうえで、担当者と更新のきっかけを決めて育て続ける。この流れができれば、NotebookLMは社内の質問に答えてくれる存在になります。

完璧な状態を目指す必要はありません。まずは共有フォルダの棚卸しと、ベテラン一人への30分のインタビューから、1回やってみてください。

Q&A

Q1. 古いマニュアルしかない場合は、どうすればよいですか?

古いまま入れるのは避けてください。まず現状と違う箇所に印をつけ、その差分をベテランや現場の担当者に聞いて直すところから始めます。直す過程で出てくる「今はこうしている理由」こそ、残す価値のある知見です。

Q2. どこまでの情報を入れてよいですか?顧客情報や社外秘が心配です。

AIに読み込ませる前に、顧客名や取引条件、個人情報を確認し、必要に応じて固有名詞を伏せる、共有範囲を限定するといった対応をとります。使うサービスがデータをどう扱うかも、事前に確認しておくと安心です。

Q3. ベテランがインタビューに乗り気でない場合は?

いきなりすべてを聞き出そうとすると、身構えられてしまいます。本人が話しやすい得意分野や、印象に残っている過去の事例から始めてください。評価や監視ではなく、大切な経験を次の世代へ残すための取り組みだと、丁寧に伝えることが出発点になります。