この記事でわかること
- AIの出力をそのまま使わず、適切な距離感で確認する方法がわかる
- 出力を評価するときに見るべき4つの軸がわかる
- 納得いく形に近づけるための修正依頼の出し方がわかる
AIに依頼すると、数秒で文章や構成案が返ってきます。見出しは整い、文章もなめらかで、ぱっと見た印象では「これで十分かもしれない」と感じることがあります。
けれど、読みやすく整っていることと、自分の目的に合っていることは別です。
このシリーズでは、「AIに上手に頼める人がやっている、6つのこと」を3回に分けて整理してきました。第1回では依頼の方向性を定めること、第2回では必要な情報を整理して伝えることを扱いました。今回は完結編として、AIから戻ってきた出力をどう扱うかを考えます。
テーマは、6つの要素のうち「評価する力」と「修正の方向を示す力」です。
AIの出力との距離感を持つ
AIから戻ってきた出力は、いきなり完成品として扱わないほうがよいです。
まずは一度、画面から目を離してみます。そして、自分が最初に何を頼みたかったのか、誰に届けるものなのか、どんな調子で伝えたかったのかを思い出します。そのうえでもう一度読み直し、「これは本当に欲しかったものか」と確認します。
この一呼吸があるだけで、出力の見え方は変わります。
AIが作ったものだからといって、特別に持ち上げる必要はありません。逆に、最初から全て疑ってかかる必要もありません。人から上がってきた下書きを見るときと同じように、ひとつの叩き台として確認します。
ここで効いてくるのが、第1回で整理した目的・ターゲット・トンマナです。自分の中に判断軸があるからこそ、返ってきた内容を照らし合わせて見ることができます。
鵜呑みにしてしまう人の落とし穴
AIの出力は、見た目が整っているぶん、そのまま受け入れたくなりやすいものです。
よくあるのは、文章の流れがきれいなだけで「よさそう」と感じてしまうことです。自分で書くより上手に見えて、手を入れにくくなることもあります。修正を頼むのが面倒になり、「まあ、これでいいか」と妥協してしまうケースもあります。
これは能力の問題ではありません。整った文章には、読み手を安心させる力があります。だからこそ、一度立ち止まって確認する必要があります。
AIの出力をうまく使える人は、最初の答えをそのまま正解にしません。使える部分と直すべき部分を分けて見ています。
出力を評価する4つの軸
「なんとなく違う」と感じるだけでは、次の修正につなげにくくなります。違和感を言葉にするには、見るポイントを分けて考えると進めやすくなります。
一つ目は、目的に合っているかです。
最初に定めた目的に対して、返ってきた内容がきちんと応えているかを見ます。たとえば、問い合わせを増やしたい文章なのに、単なる説明文で終わっていないか。社内共有のための資料なのに、読み手が行動しにくい内容になっていないか。目的から外れていないかを確認します。
二つ目は、事実関係が正しいかです。
数字、固有名詞、日付、引用、出来事の流れに誤りがないかを見ます。AIは、事実と違う内容を自然な文章で書いてしまうことがあります。もっともらしく見える文章ほど、確認を後回しにしないようにします。
自分の名前や会社名で外に出すものなら、最終的な確認は使う側の責任になります。この点についてはAIが作った資料、そのまま送っていませんか?も参考になります。
三つ目は、読者に伝わるかです。
読み手に対して、言葉の選び方や説明の深さが合っているかを確認します。専門用語が多すぎないか。逆に、簡単にしすぎて内容がぼやけていないか。社外向けなのに内輪の表現になっていないか。読み手の立場で見直します。
四つ目は、余計な内容がないかです。
不要な前置き、似た説明の繰り返し、抽象的な飾り言葉が入っていないかを確認します。AIの文章は、丁寧に見せようとして説明を重ねすぎることがあります。読みやすくするには、足すだけでなく削る視点も必要です。
この4つの軸を持っておくと、「どこが違うのか」を言葉にしやすくなります。
修正の方向を、言葉で示す
評価して違和感が見えたら、次は修正を頼みます。
このとき、「もっと良くしてください」だけでは、AIはどの方向に直せばよいか判断しにくくなります。大事なのは、どこを、どのように変えてほしいかを伝えることです。
たとえば、宮城県の製造業の経営者が、取引先へのお礼メールをAIに書いてもらったとします。返ってきた文章を読んで、少し軽いと感じた場合は、次のように伝えます。
- もう少し落ち着いた口調にしてください
- 重要な取引先なので、軽い印象にならないようにしてください
- 最後の段落が長いので、半分くらいの長さにしてください
- 感謝は伝えたいですが、大げさな表現にはしないでください
このように伝えると、AIは修正の方向をつかみやすくなります。
修正の指示を出すことは、文章を細かくいじる作業ではありません。自分が何を大切にしたいのかを、言葉にする作業です。「もう少し丁寧に」「もっと分かりやすく」だけで止めず、なぜそう感じたのか、どこを変えたいのかまで伝えると、仕上がりは変わります。
根気よく往復する
AIとのやり取りは、一度の指示で思い通りの形にたどり着くとは限りません。指示を出しても少しずつしか近づかないこともあれば、別の方向に振れてしまうこともあります。こちらが思っているほど、一発で伝わらないのが実情です。
多くの場合、2〜3回直してもらったところで「もう、これでいいか」と手を止めてしまいます。もちろん、そこで十分なこともあります。ただ、違和感が残っているのに終わらせてしまうと、最初に感じたズレは最後まで残ります。
上手に使っている人は、必要に応じて何度も往復します。違うと感じたら、何が違うのかを伝える。直ってきたものを見て、まだ残っているズレをもう一度伝える。この繰り返しで、AIの出力は少しずつ使える形に近づいていきます。
ここで効いてくるのは、回数そのものではありません。AIとのやり取りでスムーズにいかない場面に、どこまで根気よく向き合えるかです。
「ここまでで十分」と決めているのは、AIではなく自分です。AIは下書きを出してくれる存在であり、最後に納得するかどうかを決めるのは使う側です。
まとめ
このシリーズで扱ってきた6つの要素は、ひとつの流れになっています。
最初に依頼の方向性を定める。次に、必要な情報を整理して伝える。そして、返ってきたものを評価し、必要に応じて修正の方向を示す。AIへの依頼は、入力して終わりではなく、返ってきたものをどう扱うかまで含めて考える必要があります。
これは、AIだけに限った話ではありません。人に仕事を頼むときも、目的を伝え、必要な情報を渡し、返ってきたものを確認し、違うと感じたら方向を示して直してもらいます。AIに上手に頼める人は、人に頼むときの伝え方も整理できていることが多いはずです。
次にAIから答えが返ってきたら、すぐに使う前に一度だけ立ち止まってみてください。
これは本当に欲しかったものか。目的に合っているか。読み手に伝わるか。余計なものは入っていないか。
違うと感じたら、何が違うのかを言葉にして戻します。納得できるところまで、そのやり取りを続けます。鵜呑みにせず、納得いくまで向き合う。この当たり前の積み重ねが、AI活用の質を決めていきます。
Q&A
Q. 何回くらい往復すれば、納得いく形になりますか?
A. 回数で決めるより、自分の中で「これで使える」と思えるかどうかで判断するのがよいです。2回で済むこともあれば、何度か調整が必要なこともあります。違和感が残っているのに終わらせないことが鍵になります。早い段階でしっくりきたなら、そこで終えてかまいません。
Q. 修正を頼んでも、AIが似たような答えしか返してきません。どうすればいいですか?
A. 指示が抽象的になっている可能性があります。「もっと良くしてください」「もう少し分かりやすく」だけでは、AIは何を変えればよいか判断しにくくなります。「2段落目を社外向けの言葉に変えてください」「事例を別の業種に差し替えてください」「最後の説明を半分にしてください」のように、場所と方向を具体的に伝えてみてください。
何度伝えても改善しない場合は、チャットが長くなりすぎて精度が落ちている可能性もあります。一度新しいチャットを開いて、最初から指示を組み立て直すと、すっきり進むことがあります。AIの答えの精度を上げる、いちばん簡単な方法も参考になります。
それでも変わらない場合は、最初の依頼に戻り、目的やターゲットの設定を見直すほうが近道です。AIへの依頼は、目的・ターゲット・トンマナを揃えてから始まるも参考になります。