この記事でわかること
- NotebookLMの「足りない」が、うまく使えている証拠だとわかる
- 社内ナレッジ共有を発展させる三つの方向と、それぞれの担い手がわかる
- 自社がどの方向に進むべきか、判断の軸が手に入る
NotebookLMで社内FAQを作り、現場で使われるようになってきた。そんな会社で、次に出てくる声があります。「いちいち開くのが手間」「普段のチャットで聞けたらいいのに」「外回り中に、スマホのチャットからそのまま聞けないか」。
こうした声を聞くと、今のやり方が間違っていたのかと不安になるかもしれません。でも、逆です。使われていないFAQから、こんな要望は出てきません。「もっとこうしたい」という声が出るのは、ナレッジ共有が日常に組み込まれた証拠です。定着までの道のりは「社内FAQが使われない理由」で書いたとおり一筋縄ではいかないので、まずここまで来たことを認めてあげてください。
この記事では、その次の段階の選択肢を整理します。
NotebookLMの守備範囲はどこまでか
NotebookLMの得意なことは、手元の資料を読み込ませて、開いて質問し、資料に基づいた答えを得ることです。根拠となる箇所も示してくれるため、社内ナレッジの土台として信頼しやすい設計になっています。基本のおさらいは「NotebookLMとは」にまとめています。
一方で、守備範囲外のこともあります。一つ目は、自分で開いて質問しに行く必要があることです。SlackやLINE WORKSのような、普段の社内チャットの中で答えてくれるわけではありません。二つ目は、顧客データや業務システムと自動でつながって動くことです。NotebookLMは、そうした連携を受け持つようには作られていません。
これはNotebookLMの欠点ではなく、設計の話です。資料に基づいて正確に答えることに集中したツールだからこそ、安心して社内に広げられたはずです。「足りない」と感じ始めたら、それは次の選択肢を考えるタイミングが来たということです。
発展の方向は、大きく三つある
次の段階には、大きく三つの方向があります。形と担い手がそれぞれ違うので、まず全体を見てください。
| 方向 | どんな形になるか | 例 | 担い手 |
|---|---|---|---|
| 今使っているツールの中で広げる | すでに使っている環境のAI機能で、資料への質問を日常の画面に寄せる | GeminiからNotebookLMのノートブックを参照する、など | AI担当者が設定 |
| チャットボットにする | チャットの中で、質問に自動で答えるボットを作る | Gem(まず小さく試す)、Dify(チャットへの組み込み)など | 向いている人が小さく試す、または外部 |
| 社内の仕組みに組み込む | 業務システムとつないで、仕事の流れの中で自動的に答えや処理が動く形にする | Google Apps Script(Google環境で動く自動化の仕組み)での連携、外部の開発会社によるシステム化 | 外部が中心 |
一つ目は、今使っているツールの中で広げる方向です。たとえばGoogleの生成AIであるGeminiでは、NotebookLMで作ったノートブックを参照しながら質問できるようになっています。社内の資料を整理して読み込ませてきた蓄積が、そのまま次の段階でも活きるということです。新しいツールを覚える負担が小さく、AI担当者の設定で始められます。
二つ目は、チャットボットにする方向です。質問すると自動で答えてくれる専用の窓口を作り、最終的には普段使っているチャットの中に置くことを目指します。いきなりそこまでやらなくても、まずはGem(Geminiの中で目的別のカスタムAIを作れる機能)で社内向けの相談窓口を作って共有すれば、向いている人がすぐ小さく試せます。チャットの中へ本格的に組み込むなら、Dify(プログラミングなしでAIチャットボットを作れるサービス)のような選択肢があります。実際、チャットの中で使える形にすると、現場の心理的なハードルがぐっと下がります。難しければ外部に頼む道もあります。
三つ目は、社内の仕組みに組み込む方向です。顧客データや業務システムとつないで、仕事の流れの中で自動的に答えや処理が動く形にします。ここまで来ると、作る手間も、動かし続ける管理の責任も大きくなります。特に個人情報や基幹業務に関わるものは、社内で背伸びせず、外部の専門家に相談する領域だと考えてください。
どの方向に進むかは、どう選べばいいか
判断の軸は、機能の比較ではなく「誰が、どこで困っているか」です。
「開くのが手間」という声だけなら、ブックマークの周知や朝礼での声かけといった運用の工夫で足りることもあります。「チャットで聞きたい」という声が強いなら、チャットボットの方向です。「業務の流れに組み込みたい」なら、仕組み化の方向で、外部への相談を視野に入れます。
支援の現場では、「AIで効率化したい」という相談を掘り下げると、実際にはツール同士の連携や仕組みの話だった、ということがよくあります。困りごとの正体を先に見極めると、選ぶ方向を間違えにくくなります。
もう一つ、選ぶときに思い出してほしいことがあります。私たちはつい、今の仕事のやり方に合わせてシステムを作り込みたくなります。ただ、作り込むほど費用も管理の手間も増え、業務が変わるたびに直しが必要になります。先に「既存のツールに、自分たちのやり方を少し寄せられないか」を考えてみると、安く早く済むことが意外と多いものです。
高度な方向ほど、作る手間と管理の責任が増えます。全員が使いこなす必要も、全部を自社でやる必要もありません。誰が担うかの考え方は「AI活用は、全員が使いこなさなくていい」で整理しています。
発展を焦らなくていい
ここまで読んで、「うちも早く次に進まないと」と感じたかもしれません。その必要はありません。
NotebookLMだけで十分に回っている会社はたくさんあります。発展に進むのは、現場から具体的な要望が出てからで遅くありません。要望がまだ漠然としている段階で仕組みだけ先に作っても、使われないものがもう一つ増えるだけです。
進むと決めたときも、三つの方向を一度にやろうとせず、一番強い要望から一つずつ進めてください。資料の蓄積が整っているほど、どの方向にも移りやすくなります。日々の集め方は「社内ナレッジはどう蓄積するか」が参考になります。
まとめ:まず、現場の声を集めることから
NotebookLMに「足りない」と感じ始めたのは、ここまでうまく使えてきた証拠です。次の段階には三つの方向があり、今のツールの中で広げるならAI担当者、チャットボットなら向いている人の小さな実験から、仕組みへの組み込みなら外部が中心、と担い手が変わります。
最初の一歩は、現場の「もっとこうしたい」という声をメモに集めることです。集まったら、こんなふうにAIに依頼して整理してみてください。
社内ナレッジ共有について、現場から出た要望のメモを貼ります。それぞれの要望を「運用の工夫で解決できそうなもの」「チャットで使える形にしたいというもの」「業務の仕組みに組み込みたいというもの」の三つに分類して、件数の多い順に教えてください。
やってみると、声の大半が運用の工夫で片づく一方で、特定の部署から「チャットで聞きたい」が集中して出ている、といった偏りが見えてきます。分類はAIが助けてくれますが、どの声を優先するかを決めるのは人間の仕事です。まず1回やってみてください。
よくある質問
Q1. チャットボットを作るなら、NotebookLMに入れた資料は作り直しになりますか?
資料そのものは流用できます。NotebookLMのために整理してきた文書は、チャットボットの知識源としてもそのまま土台になります。むしろ資料の整理が済んでいる会社ほど、次の段階への移行は早く進みます。
Q2. 外部に相談する場合、費用はどれくらいかかりますか?
内容と規模によって幅が大きく、一概には言えません。ただ、相談の前に「誰が、どこで困っているか」と「現場の要望リスト」を整理しておくと、見積もりの精度が上がり、不要な機能にお金を払うことを避けられます。
Q3. 三つの方向を同時に進めてもいいですか?
おすすめしません。担い手も管理の負担もそれぞれ違うため、同時に進めると全部が中途半端になりがちです。一番強い要望に絞って一つ形にし、運用が落ち着いてから次を考える順番が安全です。