この記事でわかること

  • AIで作ったWebデザインが似た印象になりやすい理由
  • AIで作りやすいデザインと、AIだけで進めにくいデザインの違い
  • コーポレートサイトで自社らしさを保つために必要な考え方

自社サイトのリニューアルを検討している場面を思い浮かべてみます。

AIに「コーポレートサイトのデザイン案を作ってください」と入力すると、それらしい提案が返ってきます。色合いは整っており、写真の配置も悪くありません。一見すると、きちんと仕上がったWebサイトのように見えます。

ただ、よく見ると、どこかで見たような印象が残ります。ロゴや社名を差し替えれば、別の会社のサイトとしても成立してしまいそうな仕上がりです。

ここで起きているのは、AIの性能だけの問題ではありません。Webサイトの種類によって、AIに任せられる範囲は大きく変わります。

この記事では、Webサイト制作の中でもデザインの工程に絞り、AIに頼れる範囲と、自社で考えるべき範囲を整理します。Webサイト制作の全体像はAIでWebサイトを作る完全ガイドで扱いました。前段の企画・要件定義はAIでWebサイトを作る前に考えること、情報設計はAIを使ったWebサイトの情報設計、コンテンツ戦略はAIを使ったコンテンツ戦略で取り上げています。

AIで作ったデザインが、どこかで見た印象になりやすい理由

AIが返してくるデザイン案には、共通した傾向があります。

AIは、世の中の多くのWebサイトの傾向をもとに提案を組み立てます。そのため、依頼が曖昧なままだと、よく見かける構成や配色に寄った案が返ってきやすくなります。

たとえば、中央に大きなキャッチコピーを置き、その下に特徴を3つ並べる構成があります。似たような形のアイコンを並べて、サービスの強みを表現する箇所もよく見かけます。「お客様第一」「品質にこだわります」のように、どの会社でも使えそうなキャッチコピーも出てきやすくなります。

どれも誤りではありません。見やすく、整っており、短時間で形にするには便利な構成です。

ただ、整っていることと、自社らしさが伝わることは同じではありません。

AIは、一般的に見栄えのよい案を出すことはできます。しかし、その会社がなぜ選ばれてきたのか、現場で何を大切にしているのか、顧客からどう見られたいのかまでは分かりません。

その材料がないままデザインを作ると、見た目は整っていても、会社の強みやカルチャーが伝わりにくいサイトになってしまいます。

AIで作りやすいデザインと、AIだけでは進めにくいデザイン

AIがWebデザインの場面で役立たない、ということではありません。

向いている用途はあります。代表的なのは、ランディングページ、キャンペーンページ、期間限定の告知ページです。

こうしたページは、短期間で特定の商品やサービスを訴求することが目的です。重視されるのは、見やすさ、分かりやすさ、行動につながりやすさです。よく見かける構成であっても、目的に合っていれば十分に役割を果たせます。

一方で、コーポレートサイトやサービスサイトは、AIだけで完結させるのが難しくなります。

これらは、会社の印象を長く積み上げていく場です。取引先、採用候補者、顧客、地域の人など、さまざまな立場の人が訪れます。大事なのは、整った見た目だけではなく、その会社が何を大切にしているのかまで伝わることです。

短期の訴求が目的のページであれば、AIで素早く案を作る価値があります。一方で、長く使う会社の顔となるサイトであれば、AIの案をそのまま採用するのではなく、自社らしさを保つためのルールが必要です。

キャンペーンページはAIを活用し、コーポレートサイトは外部の制作会社などの力も借りながら設計する。用途ごとに分けて考えるのが現実的です。

コーポレートサイトに必要なのは、見た目の統一だけではない

長く運用するサイトでは、ページごとに見た目や言葉のトーンがブレないように整える必要があります。

そのために役立つのが、デザインシステムという考え方です。

デザインシステムとは、サイト全体の一貫性を保つためのルールをまとめたものです。

具体的には、色の使い方、見出しと本文のフォント、余白の取り方、写真の選び方、イラストやアイコンの雰囲気、ボタンの形、文章の語り口などを整理します。

これらが決まっていれば、新しいページを追加するときにも「この会社らしい」見せ方を保ちやすくなります。

色とフォントだけを決めても、判断のルールとしては足りません。新しいページを作るたびに、写真の雰囲気、見出しの強さ、ボタンの置き方、余白の取り方を毎回考え直すことになり、ページごとに印象がブレやすくなります。

デザインシステムは、一度作って終わりではありません。サイトを運用していくと、新しい種類のページや要素が出てきます。そのたびに、既存のルールに沿わせるのか、新しいルールを加えるのかを判断していきます。

この積み重ねによって、サイト全体の印象が保たれていきます。

AIにデザインのルールを読み込ませることはできる

デザインシステムのようなルールがあれば、AIの使い方も変わります。

自社サイトの色、フォント、余白、写真のトーン、文章の語り口、ボタンの使い方などを文書にまとめておきます。そのうえで、ChatGPTやClaudeに読み込ませれば、AIはそのルールを踏まえた提案を出しやすくなります。

このルールをもとに、新しいサービス紹介ページの構成案を作ってください

既存サイトのトーンに合わせて、キャンペーンページのデザイン方針を整理してください

このように使えば、AIの提案は一般的なパターンから離れ、自社のルールに沿った形に近づきます。

ただし、ここには大きな前提があります。AIに読み込ませるためのルールを、先に人が整理しておく必要があるという点です。

色の使い方ひとつを取っても、メインカラー、サブカラー、背景色、文字色、ボタンの色、注意喚起の色などを決める必要があります。フォント、余白、写真、アイコン、見出し、ボタンについても、それぞれ判断が必要です。

これらを整理するには、デザインの基本的な知識が求められます。

そのため、「AIに任せれば、自社で手軽にデザインシステムを作れる」と考えると、うまくいきません。AIに依頼すれば、案を出してもらうことはできます。けれど、その案を自社に合う方向へ整えていくには、人の判断が必要です。

まとめ

AIは、Webサイトのデザイン案を作る場面で役立ちます。

特に、ランディングページやキャンペーンページのように、短期の訴求を目的としたページでは効果的に使えます。整った構成を素早く出し、複数の案を比較する用途にも向いています。

一方で、コーポレートサイトやサービスサイトのように、会社の印象を長く積み上げる場では、AIだけで完結させるのは難しくなります。

必要なのは、色、フォント、余白、写真、文章のトーンなどを含めたルールです。そのルールがあって初めて、AIの提案も自社のあり方に沿った形に近づきます。

まずは、キャンペーンページやLPのような短期のページでAIを試してみるのが現実的です。そこで、AIが得意なことと、思ったようにいかないことを確認してみてください。

その経験があると、コーポレートサイトやサービスサイトを作るときにも、AIに頼る部分と、外部の制作会社などに相談すべき部分を分けて考えやすくなります。

Q&A

Q1. 既存のコーポレートサイトの画像をAIに読み込ませれば、それをもとにリニューアル案を作れますか。

A. 画面のキャプチャを読み込ませることで、色味やレイアウトの大まかな印象を参考にした案を作ることはできます。ただし、画像だけで自社のデザインルールを正確に読み取れるわけではありません。なぜその色を使っているのか、どの余白を基準にしているのか、写真をどう選ぶのかといった判断までは分かりません。リニューアルであっても、ルールを言葉にして整理する工程は必要です。

Q2. AIにデザインのコンセプトやキーワードだけ考えてもらうのは有効ですか。

A. 有効です。たとえば、「自社の強みをもとに、デザインの方向性を5案出してください」「信頼感と親しみやすさを両立する色の方向性を提案してください」といった使い方はできます。ただし、出てきた言葉を実際のデザインに落とし込むには、色、写真、余白、文字の使い方まで整理する必要があります。コンセプトを考えることと、それを形にすることは分けて考えるとよいでしょう。