上司から「先週の見積もり、期限を過ぎていたよ」と言われて、はじめて気づく。スプレッドシートのタスク表には期限を書いていたのに、見に行かなければ意味がなかった。そんな経験は、意外と少なくありません。
タスク管理表を作ること自体は、多くの会社で行われています。問題は、その後の運用です。誰かが毎日表を開き、期限の近い行を目で確認し、担当者に声をかける。このやり方は人の記憶と気配りに頼っているため、忙しくなると抜け漏れが起きやすくなります。
スプレッドシートに期限を書いておけば、朝9時に「今日が期限のタスクは○○です」とチャットに自動で通知が届く。こうした仕組みは、GAS(Google Apps Script)を使えば自分たちでも作れます。GASは、Googleのサービスを自動化できる仕組みです。
この記事でわかること
- 期限通知の仕組みがどう動くか
- 担当者と管理者で通知を分ける考え方
- 失敗しないための導入の順番
GASでスプレッドシートの期限列を自動チェックしてチャットに通知する仕組みを作ると、人が毎朝表を見に行かなくても期限切れを防げます。
期限が近いタスクを自動通知するとは
仕組みはシンプルです。スプレッドシートの期限列をGASが毎朝決まった時刻に確認し、今日や明日が期限のタスクを見つけたら、その内容をチャットに投稿します。
GASは、スプレッドシートから使えるGoogleの機能です。新しいソフトをインストールする必要はありません。スプレッドシートの「拡張機能」メニューから開けます。
これまでは、人がスプレッドシートを見に行く運用でした。自動通知を入れると、仕組みのほうから「今日これが期限です」と知らせてくれる運用に変わります。タスクの存在を覚えておく負担を、少し減らせます。
似た発想で、メールの対応漏れを防ぐ仕組みを作る方法は問い合わせメールの対応漏れを防ぐには?にまとめています。スプレッドシートを軸に「見に行かなくても気づける」運用にする型は共通です。
通知先は社内で使っているチャットに合わせる
通知先は、いま社内で使っているツールに合わせるのが現実的です。期限通知のためだけに新しいツールを入れると、使い方を覚えるところから始まり、続かなくなる可能性があります。
主な選択肢は、Slack、Chatwork、メール(Gmail)です。
Slackを使っている会社なら、チャンネルに通知を飛ばせます。Slackは無料プランでも外部から投稿するための仕組み(Webhookと呼びます)が使えるため、比較的始めやすい選択肢です。
Chatworkを使っている会社なら、Chatworkのグループチャットに通知を投稿できます。
メールで十分な会社なら、Gmailに送る方法が最もシンプルです。新しいツールを覚える必要がなく、普段のメール確認の流れに組み込めます。
担当者と管理者で通知を分ける
通知は、誰に何を伝えるかで分けると現場で使いやすくなります。
担当者には、期限が近いタスクの通知を送ります。今日や明日が期限の自分の担当分が、朝のチャットに届く形です。
管理者には、期限を過ぎてもまだ完了していないタスクの通知を送ります。誰のどのタスクが遅れているかが、自分から確認しに行かなくても見える状態になります。
これまで管理者は、スプレッドシートを開いて、未完了の行や期限切れの行を目で追い、担当者に一件ずつ声をかけていました。この手間が、通知の仕組みでかなり減ります。担当者と管理者の両方に通知が届くようにしておくと、片方任せにならずに済みます。
実際にAIに頼んで作ってもらう
コードを最初から自分で書く必要はありません。AIに依頼すれば、GASのコードを作ってもらえます。大事なのは、AIに入力する情報を整理することです。
たとえば、次のように指示します。
「スプレッドシートには次の列が入っています。
- A列:タスク名
- B列:担当者
- C列:期限日
- D列:完了フラグ(完了なら『済』)
毎朝9時に、次の2つを実行するGASのコードを書いてください。
- 今日または明日が期限で、まだ完了していないタスクを、担当者にSlackで通知する
- 期限を過ぎてもまだ完了していないタスクを、管理者のSlackチャンネルにまとめて通知する
通知文は『担当者:○○/タスク:○○/期限:○月○日』という形式でお願いします。」
AIから出てきたコードは、スプレッドシートの「拡張機能」から「Apps Script」を開き、表示された画面に貼り付けて保存します。
初回実行時には、Googleから「このスクリプトに権限を与えてよいか」という確認が表示されます。承認しないとスクリプトは動きません。
毎朝9時に自動で動かすには、「トリガー」という機能で実行時間を設定します。画面の指示に沿って進めれば、設定自体は難しくありません。
タイムゾーンが日本時間になっていないと、通知が想定外の時刻に届くことがあります。プロジェクトの設定画面で、タイムゾーンが「Asia/Tokyo」になっているかを最初に確認しておきましょう。
いきなり全社展開しない
仕組みができても、すぐに全社へ広げるのは避けたほうが安全です。まずは自分1人のタスク表で、自分宛に通知が届く状態から始めます。
数日動かしてみると、調整したい点が見えてきます。通知文の言い回しが業務に合っているか。9時という通知時刻が現場の動き出しに合っているか。期限の書き方が人によって違い、正しく読み取れない行がないか。こうした小さな問題は、実際に動かしてみないと分かりません。
特に注意したいのは、スプレッドシート側の入力ルールです。担当者名の書き方、期限の日付形式、完了フラグの入力方法がバラバラだと、せっかく作ったコードがうまく動きません。
仕組みを入れる前に、入力ルールを簡単に決めておくと、運用が安定します。「期限は日付形式で入れる」「完了したらD列に済と入れる」など、最低限のルールを1ページにまとめるだけでも運用しやすくなります。
まとめ
期限通知の仕組みは、AIに手伝ってもらえば比較的短い時間で作れます。難しいのは、コードを書くことよりも、現場で使い続けられる運用にすることです。
最初の一歩としては、自分のタスク表で、自分宛にだけ通知を飛ばす設定から始めるのがおすすめです。小さく試して、通知文や時刻、入力ルールを調整してから、チームや部署に広げるほうが失敗しにくくなります。
タスク管理表は、作っただけでは機能しません。見に行かなくても知らせてくれる仕組みに変えることで、期限切れや対応漏れを減らしやすくなります。あわせて、社内のスプレッドシート運用全体を見直したいときはGA4の数値をスプレッドシートで管理するも同じ型(スプレッドシート×GASでの自動化)の参考になります。
Q&A
Q1. プログラミングの知識がなくても本当に大丈夫ですか?
コードを書く部分は、AIに任せても構いません。ただし、AIに入力する情報の整理は人が行う必要があります。
たとえば、「何列目に何が入っているか」「どの条件で誰に通知するか」「どこに通知するか」を文章で説明できれば、コード作成はかなり進めやすくなります。
出てきたコードの細かい中身をすべて理解する必要はありません。ただし、貼り付ける場所、保存ボタン、実行ボタン、トリガー設定の場所は確認しておきましょう。
Q2. 通知が来なくなったときは、どこを見ればいいですか?
まず、GASエディタの「トリガー」画面を開き、毎朝の自動実行が設定されたままになっているかを確認します。
次に、「実行数」の画面で最近の実行履歴を見ます。エラーで止まっている場合は赤い表示が出るため、その行を開くとエラー内容を確認できます。
原因として多いのは、スプレッドシート側の変更です。列を増やした、列の順番を変えた、担当者名や完了フラグの書き方を変えた、といった変更で、コードが想定どおりに動かなくなることがあります。通知が止まったときは、まず表の形式が変わっていないかを確認しましょう。