この記事でわかること
- AIに任せる作業と自分で考える作業の線引きがわかる
- AIに丸投げした資料が、ありきたりになりやすい理由がわかる
- AIによる効率化を、考える時間の確保につなげる考え方がわかる
明日までに提案資料を仕上げなければいけない。AIに頼めば、すぐに形にできるはず。
そう思って指示を出したのに、画面に出てきたのは、どこかで見たような当たり障りのない資料だった。そんな経験がある人もいると思います。
提案資料やプレゼン資料の基本は、「伝えたい人に、伝えたいことを、伝わるように伝える」ことです。
AIが得意なのは、このうち「伝わるように伝える」ための作業の一部です。構成を整理する。見出しを整える。文章を読みやすくする。キャッチコピーを複数出す。デザインの方向性を考える。スライドの流れを整える。こうした作業では、AIは大きな助けになります。
一方で、「伝えたい人」と「伝えたいこと」を十分に考えないままAIに任せると、資料の芯が弱くなります。提案資料づくりでAIを使うなら、まずこの線引きを意識しておくことが大切です。
提案資料は「伝えたい人」と「伝えたいこと」から始まる
良い提案資料は、いきなり書き始めても生まれません。最初に必要なのは、相手の立場に立って考えることです。
この提案を受け取るのは誰なのか。
その人は今、何に困っているのか。
どんな提案なら、前向きに検討してもらえるのか。
さらに一歩進めると、その先にはクライアントの会社のお客様がいます。そのお客様は、何に不満を感じているのか。どんな状態になれば満足するのか。提案を受け取る人だけでなく、その先にいる人まで想像すると、資料で伝えるべきことが少しずつ絞られていきます。
相手の事情を想像し、自分の提案がどこで役に立つのかを考える。この往復をしないまま、見栄えだけ整えても、相手の心は動きにくくなります。
資料づくりの前に、目的と相手と伝えたいことを整理しておきます。この準備があるからこそ、AIに頼んだときの出力も使いやすくなります。
関連して、AIへの依頼前に整理しておきたいことはAIへの依頼は、目的・ターゲット・トンマナを揃えてから始まるでも紹介しています。
考える時間は、早めに一度つくっておく
提案まで2週間あるのに、前日や数日前になってようやく考え始めることがあります。気持ちはわかりますが、できればヒアリングをした当日か翌日に、一度だけでも時間を取っておくのがおすすめです。
1時間でも2時間でも構いません。
相手の課題を整理する。提案の方向性を考える。どんな切り口なら伝わりそうかを書き出す。ここまでやっておくだけで、その後の進み方が変わります。
一度しっかり考えたことは、頭の片隅に残ります。別の仕事をしているときに、ふとアイデアが浮かぶこともあります。数日後に資料を作り始めるとしても、何も考えていない状態から始めるのとは違います。
提案資料には、少し寝かせる時間があったほうがいいと感じています。
最初の1回を早めに取っておくと、後の自分がかなり楽になります。
AIが得意なのは、考えた内容を形にする作業
方向性がある程度決まったら、次にやるのは資料の骨組みづくりです。
タイトルを決め、各ページの見出しを並べ、全体の流れを確認します。ページごとの要点を整理して、レイアウトやデザインに落とし込んでいきます。
このあたりは、AIが得意な領域です。
これまで何時間もかかっていた作業でも、前提が整理されていれば、短い時間でたたき台を作れます。たとえば、次のように依頼できます。
次の提案資料の構成を考えてください。クライアントは食品メーカーの営業部長です。伝えたいことは、新しい販促サービスを導入することで、既存顧客への再提案を増やせる点です。課題、解決策、導入効果、料金、導入の流れの順で、各ページの見出しと載せる要点を出してください
このように、相手・目的・伝えたいことが入っていると、AIの出力は使いやすくなります。
逆に、「提案資料を作ってください」だけでは、一般的な構成しか出てきません。AIの出力がありきたりになるのは、AIの能力だけの問題ではなく、こちらが伝えている材料が少ないことも原因です。
自社で評判の良かった資料があるなら、その特徴を言葉にしておくのも有効です。たとえば、見出しは短くする、数字を先に見せる、導入事例を早めに入れる、色は落ち着いたものにする、といったルールです。こうした型があると、AIに頼んだときにも自社らしさを残しやすくなります。
AIに任せきりにしないほうがいい部分
AIに任せやすい作業がある一方で、任せきりにしないほうがいい作業もあります。
それは、仮説を立てる時間です。
相手の立場になって考える時間です。
この提案で本当に相手が動くのかを問い直す時間です。
試しに、課題整理から構成案までをまとめてAIに任せてみると、文章としては整っていても、自分の言葉になっていない資料が出てくることがあります。見出しもきれいで、流れもそれらしく見える。それでも、なぜこの提案をするのか、誰に何を届けたいのかが薄い。
そうなると、資料全体に芯が出ません。
もちろん、AIを考える工程で使ってはいけないわけではありません。むしろ、壁打ち相手としてはとても役立ちます。
この提案の弱点を挙げてください
クライアント側から反対意見が出るとしたら何ですか
この構成で抜けている視点はありますか
このように問いかけると、自分だけでは気づきにくい視点を補えます。大事なのは、判断までAIに預けないことです。考える主体は自分に残したまま、AIを使う。この距離感がちょうどいいと思います。
出力の整理や伝え方に迷う場合は、AIに頼んでも一般論しか返ってこない|情報の整理と伝え方も参考になります。
効率化は、考える時間を削るためではない
資料づくりに10時間かかっていたものが、AIを使って3時間や5時間に短縮できるなら、それは大きな効率化です。
ただし、10時間かかっていた作業を30分で終わらせようとすると、考える時間まで削ってしまう可能性があります。
AIに任せやすいのは、考えた内容を形にする作業です。構成案や見出しの整理、文章の短縮、キャッチコピーの複数案出し、デザインの方向性出しといった作業は、AIを使うことでかなり速くなります。
一方で、相手の課題をどう見るか。どの切り口で提案するか。どの言葉なら相手に届くか。ここは、自分で考える価値があります。
効率化とは、すべての時間をなくすことではなく、考える時間を確保するために作業時間を減らすことだと思います。
この考え方に変えると、AIとの付き合い方も変わります。AIに丸投げするのではなく、自分が考えるための余白をつくる。そのためにAIを使うほうが、提案資料の質は上がりやすくなります。
なお、AIが出した構成や数字をそのまま使うのは避けてください。事実関係の確認、表現の最終調整、相手に合わせた言い換えは人間の仕事です。出力をどう評価して直すかは、AIの出力を鵜呑みにしない|評価と修正の進め方にまとめています。
まとめ
提案資料づくりの基本は、「伝えたい人に、伝えたいことを、伝わるように伝える」ことです。
AIは、このうち「伝わるように伝える」ための作業の一部を助けてくれます。
一方で、「伝えたい人」と「伝えたいこと」を十分に考えないままAIに任せると、資料はありきたりになりやすくなります。相手の立場を想像し、仮説を立て、自分の言葉で提案の芯をつくる。その時間は、資料の質を左右する大切な工程です。
次に提案資料を作るときは、一度だけ線引きを試してみてください。
伝えたい人と伝えたいことは自分で考える。構成や見出し、リライト、キャッチコピー案、デザインのたたき台はAIに任せる。
この使い分けができると、AIは単なる時短のためのものではなく、提案の質を上げる助けになります。
仮説や問いを自分で立てる練習については、AIにアンケートを頼む前に、仮説と問いを整理するもあわせて読んでみてください。
Q&A
Q1. AIに考える工程まで頼んではいけないのでしょうか?
A. 考える工程でAIを使うこと自体は問題ありません。むしろ、壁打ち相手として使うと、自分では気づかなかった視点を得られることがあります。
たとえば、「この提案の弱点はどこか」「相手が反対するとしたら何を言いそうか」「別の切り口はあるか」といった問いを投げる使い方です。
注意したいのは、判断までAIに任せてしまうことです。AIの案を見ながら、自分で選び、自分で直し、自分の言葉にしていく。その流れを残しておけば、考える工程でもAIは十分に役立ちます。
Q2. 自社のトーンやデザインの型は、どう作ればいいですか?
A. 大がかりな準備は必要ありません。まずは、過去に評判の良かった資料を数本並べて、共通点を書き出すところから始めるとよいです。
見出しは短いか。数字をどのタイミングで見せているか。導入事例をどこに入れているか。文章は硬めか、やわらかめか。色やフォントに一定のルールがあるか。
こうした特徴を1枚のメモにまとめておくと、AIに依頼するときの土台になります。資料の型があるだけで、AIの出力はかなり調整しやすくなります。